No.178 新しい朝が来る6枚
2010/07/13 | タグ:30 SECONDS TO MARS CECILE CORBEL INCOGNITO THE QEMISTS THE REIGN OF KINDO YES GIANTESS
昔の誰かが「夏は夜」とのたまっていましたけど、個人的に夏といったら断然〈朝〉派。仕事に出る親を見送ったあと、早めに宿題に手をつけるつもりだったのに、何となくNHK教育チャンネルの番組を見続けていたらいつの間にかお昼になっている、あのだらーんとした感じ。冷房はつけず、かたくなに扇風機で過ごせばなお良いです。7月も半ばにさしかかった今週は、本格的な夏の朝をよりエンジョイするための盤をご紹介いたします。いつになく洋モノが多めです!
■視界が広がる2枚
1. 30 SECONDS TO MARS『This Is War』(海外盤発売中、日本盤7月14日発売)まずは、映画「レクイエム・フォー・ドリーム」でラリラリの主人公を演じた俳優ジャレッド・レト率いる30セカンズ・トゥ・マーズの新作から。2009年末にリリースされたアルバムですが、リードトラックとなっている“Kings And Queen”の別ミックス2曲をボーナストラックとして収録した日本盤が改めて発売されます。U2を手掛けてきたスティーヴ・リリーホワイトとフロッドという2人のプロデューサーとタッグを組み、本格的に勝負を仕掛けてきた意欲作で、1曲目の“Escape”からしてハリウッドのSF超大作のオープニングのようなスケール感を醸し出しています。その後に続く本編も、デペッシュ・モードやミューズに迫らんばかりの耽美的かつスケール感のあるサウンドが続々と展開され、確実にスタジアム級の会場を想定したバンドの野心がひしひしと伝わってくるのでした。〈サマソニ〉でのライヴにも期待が高まります!
2. CECILE CORBEL『借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック』(7月14日発売)ジブリ作品というと条件反射で久石譲の名前を思い浮かべがちですが、さにあらず。7月17日に公開される最新作「借りぐらしのアリエッティ」は、流麗な歌声とハープでケルト民謡を奏でる女性アーティスト、セシル・コルベルが音楽を担当しています。すでにイメージ・ソングを集めたアルバムも発売されていますが、こちらはインストをメインにして構成されたもの。ケルトの代名詞たるエンヤともまた一味違う、ほんのちょっと幼さをのこしたぬくもりのある音色がひたすら心地よく耳をくすぐってくれますよ。映画本編では使用されていない楽曲も収録されているそうです。
■リズムを作れる2枚
3. THE QEMISTS『Spirit In The System』(発売中)ファースト・アルバム『Join The Q』がスマッシュ・ヒットを記録し、ここ日本でも高い人気を確立したケミスツが、満を持して第2打をかましてくれました。デビュー作の段階でドラムンベースもヘヴィー・ロックもねじ伏せる剛力バンド・アンサンブルが完成しきっていただけに、セカンドのジレンマを克服できるのかやや不安だったのですが、本作ではライヴで発揮されるロック色の強さをスタジオ作品にも取り入れることによって一味違う側面を見せてくれます。盟友エンター・シカリを筆頭に、前作同様ほぼ全曲でシンガーやMCをフィーチャー。曲によっては緻密な絡みを捨てて露骨に王道ロックっぽい音の重ね方をしたりしていて、正統なスタイルを取り入れることによって違和感を出しているあたりがおもしろいなあ、と思った次第であります。
4. YES GIANTESS『Siren』(日本盤7月14日発売)パッション・ピットの活躍によって知名度を上げた〈NEON GOLD〉レーベルから、ボストン出身の4人組、イエス・ジャイアンティスが登場。シンセの音を軸としてポップな世界を云々……みたいな文脈で紹介されるバンドはMGMTとアニマル・コレクティヴ以降ごまんと出てきましたが、このアルバムには現在のUSインディー勢につきまとうサイケっぽさやトリップ感みたいなものがそれほどなく、むしろオモチャ感覚でウワモノを楽しく使った楽曲が満載。メロディはR&Bっぽいのにまったく粘りっ毛を感じさせないヴォーカルのユルさもステキです。それでもやっぱりどこかペシミスティックなトーンが全編を包んでいるあたりは典型的な現代っ子スタイルなのかもしれませんが、とりあえず肩の力と頭のネジをゆるめて、かまえることなく歌って踊れる良盤であることに間違いはないです。はい。
■いろいろ混ざった2枚
5. INCOGNITO『Transatlantic RPM』(日本盤7月14日、海外盤7月26日発売)エグみのない大人のアーバン・ミュージックを堪能したいのなら、もうこれしかねえ!……とムダに啖呵を切ってしまいたくなるほどスムース&グルーヴィな、英ジャズ/ファンク界の雄、インコグニートの新作でございます。結成から約30年というキャリアの長さは伊達ではなく、タイトルが示す通り、ヨーロッパ、南北アメリカ、カリブ、アフリカなどからあらゆるジャンルのホットなエッセンスのみを絞り出し、大西洋に放り込んでかきまぜたたかのような、極上のエンターテイメントを堪能できます。前作にも参加していたメイザ・リークや、チャカ・カーン、エリック・ベネイなどなど、ゲスト陣もヴァラエティ豊か。絶対に裏切らない1枚かと思われます。
6. THE REIGN OF KINDO『This Is What Happens』(日本盤7月14日発売)最後は、ありそうでなかったNY出身のピアノ・ロック・バンド、レイン・オブ・カインドのニュー・アルバムを。昨年の〈朝霧JAM〉に出演していたので、ご覧になった方も多いのでは。各パートのキャラがしっかり立っていて、それでいて得意としているであろう領域がちょこっとずつズレているかんじがメチャクチャおもしろく、例えばピアノはわりとシアトリカルなのに、ギターが急にポストロック然としたクリーン・トーンの短音リフを奏でたり、かと思えばリズム隊はディスコ・パンクみたいなことをやりだし、そこにマイク・パットンやインキュバスのブランドン・ボイドを彷彿とさせるヴォーカルが乗っかったり……といった具合。しかもそれでいて整合性はバッチリ取れているという不思議。アルバムも素晴らしい仕上がりでしたが、ぜひライヴも見ておきたいです。というところで今週はお別れです! また次回~。
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