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No.171 パン屋で聴きたい6枚

2010/05/26 | タグ:

Text:田家 大知

 知らない場所をあてもなく歩いてその土地ならではのパン屋に飛び込むのが好きなのですが、ここ最近はそれがエスカレートして、多い時には1日に10個くらいパンを食べています。ああ、パン大好き、パン、パン。パンと書いているだけでヨダレが止まりません。そんなことをよく話していると、周りの人も「じゃあ、あそこのパン屋行った?」とオススメしてくれるので、行きたいパン屋は増える一方。さらには「そんなにパンが好きならホーム・ベーカリーを買って家でパン作ったら?」と言われ、新たな楽しみができそうで心躍っております。そんなワクワク感満載のテンションで、今回はパン屋で聴きたい6枚です。

■こんな10代がいたら恐ろしい!と言いたくなるような2枚

1. OKAMOTO'S『10'S』(発売中)

 まずトップ・バッターはこの人たちしかいないでしょう。ダウンタウンの浜ちゃんとTHE PRIVATESの延原達治さんの息子さんが在籍していることでも知られる4人組バンド、OKAMOTO'S。メンバーは中学の同級生で10代、みんな岡本太郎好きでラモーンズのように全員苗字は〈オカモト〉を名乗り、USツアーも大盛況に終わらせるなど、さんざん話題が上るなかで放たれるニュー・アルバム『10'S』です。一聴して思ったのは、もうただただ恐ろしい! 寒気がするほど末恐ろしくなるようなロック・アルバムです。演奏力もズバ抜けているのだけど、それは決してただの〈うまい〉ではなく、〈にくい〉感じなんですよね。おっさん顔負けのバネとタメのあるリズムと、全体を覆うふてぶてしさと余裕。これらは天性のものだと思います。ストーンズと並べて語られることの多い彼らですが、そんな高評価にも納得。この先どこまでビッグになるのか楽しみで仕方ありません。そして何よりも、10代ということが本作の価値を何百倍にもしていると思います。年齢のことばかり言われるのは本意じゃないでしょうが、彼ら自身も20代、30代と歳を重ねていくごとに、この作品のすごさに改めて気付くのではないでしょうか。

2. THE FLY GIRLZ『Da' Brats From Da' Ville』(国内盤:6月2日発売、海外盤:6月8日発売予定)

 続きまして、こっちの10代も負けずに末恐ろしいです。ブルックリンから飛び出した奇天烈ガールズ・ヒップホップ・グループ、フライ・ガールズのデビュー作『Da' Brats From Da Ville』なわけですが、これが全員中学生というのだから、頭がクラクラしてきます。変態チックなシンセを核とした、チープでエレクトロニックなトラックの上に、人生の苦労をまるで知らないような10代ならではの無邪気で小生意気な舌足らずのラップが躍動しまくり。その対比が絶妙かつ不思議な融合を果たし、まさに〈レペゼンNYC〉って感じの唯一無二のポップ性を生成しています。資料を読むと、Zsのサム・ヒラーが、アニマル・コレクティヴ一派のエクセプターのシンセ奏者、ネイサン・コービン(aka ゼブラブラッド)にトラックメイクを依頼。この奇才タッグによる共同プロデュースのもとで作られたということで、大人たちの力も多少絡んでいるようなので少々ホッとしましたが、ここまで来ると「この10代すごいね!」とは手放しに喜べないくらいです。いろんなミュージシャンの方々も、これを聞くと、明らかに時代が変わった……と思い、複雑な気持ちになるのではないでしょうか。もちろん自分も、どうしようもなく歳をとったということに気付かされました。

■自分のルーツに立ち返りたくなる2枚

3. くるり『僕の住んでいた街』(発売中)

 そしてお次は、くるりの2枚組カップリング・ベスト・アルバム『僕の住んでいた街』を。これまでの22枚のシングルのカップリング曲を全曲収録した本作は、そのほとんどがアルバム未収録ということで、まさにファンは必携の一枚。新解釈の東京音頭?といった趣の民謡チックな新曲“東京レレレのレ”から始まり、〈エクスペリメンタル・サイド・オブ・くるり〉とも言えるような実験精神溢れる楽曲が次々と繰り出されてきます。2006年に出たベスト盤にも本作に収録されたB面曲のいくつかが収録されていたことからもわかる通り、本人たちも自分たちのこういう冒険的な部分が大好きなんでしょうね。あとはタイトルにも表れているように、やっぱりくるりがここまで支持されてきたのって、日本の街の持つ哀愁だとか、うらびれた感とかジメジメした暗さとかに直結している部分もあるからだと思うのですが、本作でも強烈にそういった陰のパワーを感じます。日本人でよかったなあと思うと同時に、日本人って怖いなあーとも思いました。実家に帰りたくなる一枚です。

4. カヒミ・カリィ『It's Here』(6月9日発売)

 そして、最近は結婚・出産とプライヴェートな話題が続いていたカヒミ・カリィのニュー・アルバム『It's Here』です。オリジナル作品としては前作『NUNKI』以来3年8か月ぶりとなる本作は、前作に続きプロデューサーにジム・オルーク、大友良英を迎えて制作。また自身による初の作曲作品が収められていることでも話題ですが、彼女のブログを読むと、妊娠中に作った曲もあったそうで、なぜそんな大仕事が一度にできたのかわからず、一瞬にして世界旅行をしたような超体験だったとのこと。そういったものがあってか、これまでのクールなイメージとは違って、母親の胎内にいるような優しい一枚に仕上がっています。歌声を聴いていても、彼女がマリア様のような笑顔で歌っている映像が浮かんでくるんですよね。理屈で考えることなく、女体の神秘や母の偉大さを感じてください。タイトルのように、〈今ここにいること〉の奇跡について思いめぐらせたくなる一枚です。

■こんな大人になりたい!と思わせる2枚

5. WOODS『At Echo Lake』(海外盤:発売中、国内盤:6月9日発売)
『At Echo Lake』収録“Death Rattles”

 お次は今回の大きな掘り出し物でした。リアル・エステートやフレッシュ&オンリーズらを擁するNYのレーベル〈Woodsist〉のオーナー、ジェレミー・アール率いるローファイ・オルタナ・バンド、ウッズの新作『At Echo Lake』です。彼らのことは全然知らなかったのですが、すごくいいバンドですね。実験性溢れるサイケな哀愁ポップに乗る極上のメロディー、消え入りそうなファルセット・ヴォーカル。サウンドもそうですが、声に大きな魅力と特徴があるのが強いと思われます。レーベル名やバンド名に〈Wood〉を使っているということは、やっぱり木へのこだわりがあるのでしょうか。確かに、無機質でコンクリートな感じは一切しなくて、暖かい木の香りがプンプンします。

6. TEENAGE FANCLUB『Shadows』(海外盤:5月31日発売予定、国内盤:6月16日発売)
『Shadows』収録“Baby Lee ”

 そして、最後はこの人たち。グラスゴー出身の重鎮バンド、ティーンエイジ・ファンクラブによる前作『Man-Made』以来5年ぶり9作目のアルバム『Shadows』を。本作はいつものティーンエイジ・ファンクラブとは少し違います。こんな年配の方をつかまえて、自分みたいな若輩者がこんなことを言うのもおこがましいですが、この5年ですごく成長したのではないでしょうか。というのも、彼らはこれまで、シンプルなサウンドの上にいいメロディーを乗せるという初期からのスタイルを貫いてきましたが、本作ではそこから脱却して、ピアノやストリングをふんだんに使うなど、もう一段上のポップさを目指しているような気がします。長かった青年期に別れを告げ、ついに壮年期に足を踏み入れたような作品です。あの歳になって音楽を続けることさえ大変でしょうが、ここまでのものを作ってくるとは。改めてリスペクトしたくなりました。本人たちの顔を見てもいい歳のとり方をしているし、こんな大人になりたいです。

●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
1. OKAMOTO'S『10'S』
2. THE FLY GIRLZ『Da' Brats From Da' Ville』
3. くるり『僕の住んでいた街』

4. カヒミ・カリィ『It's Here』
5. WOODS『At Echo Lake』
6. TEENAGE FANCLUB『Shadows』

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