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No.150 黙って楽しむ5枚

2009/12/15 | タグ:

Text:OOPS!編集部原田

 最近、と言っても5~6年くらい前からぼんやり気になっているのが、70年代あたりの日本の都市の風景であります。当時の映画なんかを見ていると、「70年代の渋谷はこうなってたのか」みたいな発見がポツポツとあったりして地味に楽しいんです。ただ、それをアウトプットする場所がない。友達に話しても、そっけない返事で終わりだし、それがどういいものであるのかをプレゼンする能力がこちらにもないわけでして。たとえば、自動販売機をずっと見続けている人なら、「これは79年までに作られたA32型だね。日本に残っているのはココと尾道の駅裏だけだよ」みたいなうんちくを一つかますこともできたんだろうなと思ったりもするわけです。あ……、でもこうやって文字にしてみたら自動販売機のうんちくなんてされても楽しくないわ。それはいかん。黙ってひとりで楽しむのが正しかったんですね、きっと。いま気づいてしまいました。というわけで、今回は黙って楽しむ5枚をお届けいたします。

■ニューエストな3作

1. androp『anew』(12月16日発売)

 まずは、本作でデビューするギター・ロック・バンド、andropの『anew』から。J-WAVEやMySpaceで話題を集めながらもバンドの露出はあまりせず、噂が噂を呼びながら存在を知らしめてきた彼ら。ファルセット使いのヴォーカルと、安定した演奏力、さらにポップなメロディーで〈RADWINPSの次〉的な存在となりそうです。自分が最も注目した点は、ギターの音処理です。チョップされたかのように細かくエディットされ、独自のデジタル感を生み出しているのでした。ギターだけでもいろんな音色を使っているのですが、カットイン/アウトといった音響処理の部分もデジタル感が強く、サンプリング → エディットの作業を挟んでいるかのよう。なんつーか、これまで使われてた意味と違う意味でデジタル・ロックだなーと思ったりしました。

2. キノコアザヤカ『GOOD LIFE GOOD MUSIC』(12月16日発売)
キノコアザヤカ“Hey Girl”ライヴ映像

 続いては、サーフ系アコースティック・バンド、キノコアザヤカの『GOOD LIFE GOOD MUSIC』を。ジャック・ジョンソン以降といった枠に入るバンドかと思われます。彼らにとって最大の武器はキーボードでしょう。エレピ系のウォーミーな音が入ってくると有無を言わさずメロウな気分にさせられてしまいます。大人数の利を生かしたタメ、無骨さが人情味となって現れているかのようなコーラスもよいです。とりあえずライヴが見たいと思わせるグループであります。

3. mmm『パヌー』(12月16日発売)

 フェードインしてくるようなか細いヴォーカルから、演劇的なスタイル、さらには似非シャンソンまで。極めて少ない音数のトラックとヴォーカルで勝負する彼女は、mmmと書いてミーマイモーと読む、若干22歳の若者なのだそう。こちらの『パヌー』がこれまた初アルバムです。聴いて「ん?」と思わせる得体の知れない感には、ギミックも割と含まれている気がするけど、聴いているとつい引き込まれてしまいます。装ってそうな天然っぷりなんだけど、実はそのギリギリのラインが表現したいところなんじゃないでしょうか。二階堂和美好きにはたまらんものがあるはず。“ゲロ吐く時の歌”、“外人さん”といった乱暴な曲のタイトルにも、謎感が存分に漂っております。資料には載っていないので、顔が見てみたいです。パティ・ウォータース好きからジャネット・クライン好きにまで聴かせたくなる作品でありました。

■次の人たちの2枚

4. 蓮沼執太『wannapunch!』(2010年1月1日発売)
前作『ポップ・オーガ』収録の“Soul Osci”

 緻密な音作りで叙情性を作り出す電子音楽家、蓮沼執太の新作『wannapunch!』は、今年の7月に行われた観客参加のライヴ・レコーディング作。会場で鳴ったすべての音を録音し、それらを素材にエディットしまくって作られた狂気のアルバムであります。制作には孤独な作業が多そうなのに、なんだか牧歌的な雰囲気が伝わってくるのは、参加者の楽しさがきっちり音に閉じ込められているからなのでしょう。1作ごとにフォーマットを変えながらも、自分の音を作り出すトライアルな姿勢が素晴らしいです。これまで以上にプレッシャーが大きかったと思うんですが、コンセプトに負けずにいいものを作り上げた精神力もすごい。リリース後のライヴも期待しております。

5. 相対性理論 + 渋谷慶一郎“アワー ミュージック”(2010年1月6日発売)
“アワー ミュージック”収録曲のオリジナルを収めた渋谷慶一郎『ATAK015 for maria』のトレイラー映像

 昨年末あたりから注目を浴びはじめ、あれよあれよという間にビッグネームにになった感のある相対性理論。彼女たちが、電子音楽家の渋谷慶一郎氏となぜかコラボ・シングル“アワー ミュージック”をリリースいたします。渋谷氏のピアノをフィーチャーしているせいか、いつものラフな作りに比べ、ミックス周りがとっても丁寧。音がクリアで、やくしまるえつこ嬢、略してやくまるのけだるいファルセット・ヴォイスが耳元で鳴っているようであり興奮するのでした。シティポップ~AORに触れるか触れないかといった曲調ともベストマッチングであります。しかしこうやってちゃんとした音で聴くと、彼女がカヒミ・チルドレンという文脈で語られることに説得力がどんどん出てきます。90年代の記憶が脳内にこびりついて離れないタイプの人間としては、「終わっていたと言われていた90年代はここにあったか!」とひとり事を言いたくもなってきます。って、このひとり言はちょっとヤバい匂いがしますね。そんなヤバさを残しつつ今回はひっそりと終了するのでした。

●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
1. androp『anew』(12月16日発売)
2. キノコアザヤカ『GOOD LIFE GOOD MUSIC』
3. mmm『パヌー』

4. 蓮沼執太『wannapunch!』
5. 相対性理論 + 渋谷慶一郎“アワー ミュージック”

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