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No.127 あっけない夜を彩る6枚

2009/06/22 | タグ:

Text:高橋 聡太

 めっきり日が長くなってまいりました。「暗くなったら帰ろうかなあー」と思ってふらふら散歩をしていると、いつの間にやら夜も7時を過ぎていたりします。さらに本日6月22日は夏至! 一年で最も長いこと太陽ががんばっている日であり(関東は雨でしたが)、同時に最も夜があっけなく終わってしまう日でもあり。ほんのちょっとだけ……と部屋でだらだら夜を更かそうにも、あっという間に日が昇ってしまい、なんだかやるせない気分になりますよねー。今回は、そんな刹那的一夜のお供にふさわしい6枚を紹介いたします!

■夜通し待ちわびた2枚

1. 木村カエラ『HOCUS POCUS』(6月24日発売)
木村カエラ “Butterfly”TV出演動画

 まずはデビュー5周年を迎える木村カエラのニュー・アルバムから。リスナーとしてややひねくれている自分としては、どうしてもいわゆる〈オルタナ・ロック〉風サウンドに耳がいってしまいがちなのですが、なかば動物的直感で新しいモノを求めて瞬時に自在にスタイルを変える大胆さと、どんなに音楽的な色合いが変わってもゆらがない木村カエラその人の魅力には、毎度のことながら素直に驚かされます。本作ではオープニング・ナンバーの“Dear Jazzmaster '84”や、シングル“Butterfly”、日本人ならではの四季描いた“season”(←いい曲!)など、童話の薫りさえするノスタルジックな曲調が随所にみられ、このへんに何となく海の向こうで近頃ブームのフリーク・フォークからの影響をかんじました。今後も2000年代を代表するポップ・アイコンとして、はちゃめちゃやってくれることでしょう!

2. pez'moku『ペズモク大作戦』(7月1日発売)

 驚異のごった煮感覚で独自のジャズ・サウンドを洗練させてきたPE'Zと、シンプルな言葉の力を信じてストレートな歌を追求するsuzumoku。一見して真逆な道を歩んでいるようにも思われる両者による邂逅ユニット、pe'zmokuがいよいよフル・アルバムをリリースします。真っ直ぐ刺さる歌詞といいバンドのキャッチーなフレージングといい、聴いた印象はきわめてクリアなのに、いざ具体的に言葉にするとなるとジャズでもないしフォークでもないし……といったかんじで、見事に既存の枠組みを逸脱し、それぞれ単体では決してありえなかったであろう新境地を見せてくれます。これはもう圧倒的に正しい新たなJ-POPのイチ到達地点なのでは。失踪事件などのスキャンダルも吹き飛ばす渾身の大作戦でした。

■夏祭り気分を先取りする2枚

3. Esne Beltza『メイド・イン・エウスカル・エリア』(7月2日発売)
Esne Beltza“Bozgorailuetatik”ライヴ映像

 スペイン内の自治州というや特殊な背景を持つバスク地方から、バーリトゥードゥなハードコア集団、エスネ・ベルサがデビュー。もともとバスク音楽シーンの重鎮であるフェルミン・ムグルサのバックバンドを務めていただけあって、その実力は折紙つき。複雑な民族的バック・グラウンドに裏打ちされたカオティックな音で、見事に殴り込みをかけてくれました。レゲエ、ダブ、スカといった要素を貪欲に取り入れた音楽も今や特に珍しくはなくなりましたが、彼らのそれは密度が段違い。とりわけヴォーカルのねっとり感が尋常ではなく、本場の血の濃さを存分に見せつけてくれています。露骨な雑食性が「こんなのも好きなんだぜ」的なインテリ感につながらず、単純にラヴ&ピースでもりあがれる作品に仕上がっているところも素晴らしい。今年はフジロックにも出演するそうなので、参戦予定の方は是非チェックしてみてください。

4. 環ROY/DJ YUI『COPYDOGS』(6月24日発売)
環ROY/DJ YUI『COPYDOGS』ダイジェスト音源

 続いては、フリーキーなスタイルで一躍その名をあげたラッパーの環ROYと、DJ YUIが作り上げた、オリジナル5曲+リミックス9曲の満腹ミニ・アルバム。“J-rap new era”というオープニング・ナンバーのタイトルに恥じぬ、挑戦的な一枚です。とにかくリリックのキレのよさにびっくり! 道化としての魅力が十分に発揮されているだけに、社会的なメッセージがザクッと突き刺さります。引算の美学を堪能できるオールドスクールなオリジナルのサウンドと、fragment、E.D.O.、ECHO SOUNDSYSTEM、やけのはらpunpee鎮座DOPENESS、chew-Z、peechboySKYFISHBOGULTAといった豪華ゲスト陣によるリミックスを聴き比べるのもまた一興。ちなみに環ROYもフジロックに登場しますよー。

■体育座りで味わうアヴァンな2枚

5. Patrick Watson『WOODEN ARMS』(6月24日発売)
Patrick Watson “Fireweed”プロモ・クリップ

 ラスト2枚は、明かりを消してじっくり聴きたい渋めな洋楽インディ作品をご紹介いたします。まずはカナダはモントリオール出身のシンガー・ソングライター、パトリック・ワトソンのニュー・アルバムを。ジェフ・バックリィルーファス・ウェインライトといった、美しいファルセットを持つ歌い手の系譜に位置するアーティストでして、日本での知名度はまだそれほど高くありませんが、カナダのメディアではアーケード・ファイアファイストなどと同列で語られるほどの注目株。ソリッドで冷たい実験的なトラックとヴォーカルとの相乗効果が、どこまでも静かな世界へ連れて行ってくれます。こころなしか梅雨どきのイヤなじめじめ感も軽減したような気がしないでもないです。

6. Jackie-O Motherfucker『Ballads Of The Revolution』(海外版:発売中、日本盤:6月25日発売)
Jackie-O Motherfuckerライヴ映像

 こちらは、1994年の結成から参加したメンバーは合計で40人以上という自由なスタイルで活動を続けている異色のヴェテラン、ジャッキーO・マザーファッカーの最新作。サーストン・ムーアジム・オルーク山本精一merzbowといったトップ・ランナーたちも絶賛するオレゴン州ポートランド出身のグループです。近頃では大所帯サウンドというと精密かつダイナミックに作り込まれたものが主流ですが、彼らが鳴らすのはこの上なくルーズな即興エレクトリカル・サイケ。聴いていると、雲の動きを目で追うような何とも言えない時間のずれを感じてしまう、摩訶不思議な力が詰まっております。リピート設定でアルバムを聴いていたら、どこではじまったのかもよく分からなくなってしまいました……。そんなかんじで精神的に迷宮入りしたところで、今週はお別れ。来週もよろしくおねがいいたしますー。

●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
1. 木村カエラ『HOCUS POCUS』
2. pez'moku『ペズモク大作戦』
3. Esne Beltza『Made In Euskal Herria』


4. 環ROY/DJ YUI『COPYDOGS』
5.Patrick Watson『WOODEN ARMS』
6. Jackie-O Motherfucker『Ballads Of The Revolution』

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