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No.126 つい振り返ってしまう6枚

2009/06/16 | タグ:

Text:OOPS!編集部原田

 夜、一人で部屋にいると、誰かが後ろから自分を見ている気がしますよね。これから夏に向けて、〈誰かが見ている感〉は増す一方。つい後ろを振り向いて安心したものの、今度はその姿を後ろから誰かが見ている気がして急いで振り向いて一安心。でも、もしかしたらまた後ろに……と、非生産的に忙しいシーズンに突入してキョロキョロ振り返りっぱなしの毎日を送っている方も多いことでしょう。そんなノイローゼ気味のキッズに向けて今週は、つい振り帰ってしまう6枚と題してお送りいたします。モニタに写る後方をを気にしつつ。

■難解ではないけど、理解はできない作品

1. ASA-CHANG&巡礼『影の無いヒト』(6月17日発売)
ASA-CHANG&巡礼 フランス公演の映像

 ASA-CHANG&巡礼にとって4年ぶりとなるアルバムがこちら。相変わらず突き抜けております。タブラと朗読のエディット、チップマンクス・ミーツ・ダブ、へっぽこな楽団風、偽エキゾチックな歌もの、高速タブラのドラムンなどが並び、狂ったアヴァン・ポップ作として仕上がっております。曲ごとにやっていることはバラバラなのに、どこから聴いてもASA-CHANG&巡礼の曲でしかない。見えない判子が押されているように、曲からは巡礼の匂いが立ち込めているのです。ユーモアと怖さが同居していて、生理的な快感はないのについ何度も聴いてしまう、そんな1枚であります。キャリア最高傑作、と言いたいんだけど、彼らの場合なにを持って「いい/悪い」の判断をしたらいいのか正直わかりません。でも理屈じゃなくすごい。感じるアルバムであります。

■ブラック! ファンキー! イマジネイティヴ!

2. RADIQ『PEOPLE』(6月17日発売)

 お次は半野喜弘のプロジェクト、RADIQの新作『PEOPLE』を。前作『Ballad For The Atomic Age』は彼の美学が詰まった、ジェントルにして端正なダンス・ミュージックという印象でしたが、本作は70年代のブラック・ミュージックを参考にしたとのことで、ソウルフルで荒く、なによりファンキーであります。人力ファンクの泥臭さを、エレクトロ・フィルターを通して換骨奪胎した現代のファンク、という感じでしょうか。確実にレイドバックしてるんだけど、今の音でしかない。素晴らしいです。

3. SCOOBIE DO『SPARKLE』(6月17日発売)
SCOOBIE DO×RHYMESTERライヴ動画

 『SPARKLE』と聞くと、誰もが思い出すのが御大山下達郎のアルバムでしょうが、間違いなく同作を意識したタイトルを持ってきたのがSCOOBIE DOの新作であります。1曲目から軽やかで、キラキラ感40%増し。メロディーとギター・フレーズの絡みがなんとも切なく、美しい。初期スクービーの持っていた甘酸っぱさ&アップデートされたリズム隊の強固さが、がっちり結びついております。適度に無骨なミックスもスピード感に拍車をかけているようであります。

4. CHIYORI『CHIYORI』(6月24日発売)
CHIYORI“悲海”ライヴ動画

 Shing02が在籍するレーベル、MaryJoyから登場した初の女性シンガー、CHIYORIの初アルバムであります。聴いて驚かされるのが、なんと言っても彼女の声の存在感でありましょう。伸びやかな歌唱から、瞬時に細かくヴィヴラートし、脱力したヴォーカルに流れる。それら一連の動作に全く違和感を感じさせないのであります。ダビーなダウン・ビートの上でゆらゆらと歌うスタイルに、UAを想像する方もいそうですが、彼女は奔放に見えつつテクニックに意識的なのではないかと。天国のデメトリオ・ストラトスさんもきっと彼女のことを気に入るはずです(知らないけど)。

■芸暦(キャリア)の意味を感じさせる2作

5. TORTOISE『Beacons of Ancestorship』(6月24日発売)
TORTOISE“Prepare Your Coffin”プロモ・クリップ

 いつのまにかキャリア15年を誇るトータスにとって5年ぶりとなる本作。『Standards』以降のバンド感は健在ながら、音色のせいか、フュージョン~後期プログレっぽい印象を受けました。既にポスト・ポスト・ロックが出ているような状況で、彼らをポスト・ロックのオリジネイターと表現することはなんだかおかしな気がしなくもないですが、最早トータスも円熟の域に達しているのではないかと、このアルバムを聴いて思ったのでした。

6. VASELINS『ENTER THE VASELINS』(海外盤:発売中、日本盤:6月17日発売)
THE VASELINES 08年のライヴ動画

 ラストは、〈ニルヴァーナのカート・コバーンが愛した〉のフレーズのみが一人歩きしている感もあるヴァセリンズの編集盤を。今聴いても瑞々しく、不器用。でも妙に愛すべきところがあります。なんですかねー、わかりやすくポップなんですよね全部。ローファイすぎる音の構造もそうだけど、歌詞がエロい、みたいなところも含めてキャッチー。子供が聴いて真似しちゃうような、わかりやすい音楽なんじゃないでしょうか。編集盤『The Way of the Vaselines』のリマスター盤ですが、本作にはデモやライヴ音源が収録されたおまけディスクも付いてお徳であります。

 はい、こんな感じでお送りして参りました。オカルトっぽい書き出しにしてみたんですが、梅雨入りの季節とはマッチしませんね、全然。次回はもっと季節感を匂わせるタイトルを選んでみます。ではまた。チャオ!

●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
1. ASA-CHANG&巡礼『影の無いヒト』
2. RADIQ
『PEOPLE』
3. SCOOBIE DO『SPARKLE』


4. CHIYORI
『CHIYORI』

5.TORTOISE『Beacons of Ancestorship』
6. THE VASELINES『ENTER THE VASELINES』

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