No.123 日常にさりげない革命を起こす6枚
2009/05/25 | タグ:ANTI-FLAG JOAN OF ARC NEW CASSETTES The Present TLKY. 遊佐未森
先日書類を整理していたら水道代の領収書が4,5枚ほど出てきてたのですが、ざっと目を通して驚愕。請求額が全部2,982円でドンピシャでした。ちゃんとメーターを計っていただいてなお一糸乱れず同じ金額……ということは月々の自分のライフスタイルがそれだけ固定されてしまっている、ということなのでしょうか。転がる石のようにロックな生活を夢見て上京してきた自分にとっては、大変ゆゆしき事態であります! というわけで、本日はそんなありふれた日常にさりげない革命を起こす6枚を紹介。
■意識を変える社会派1枚
1. ANTI-FLAG『The People or the Gun』(日本盤 6月10日発売予定)オバマ大統領のもと、ここぞとばかりに勢いづくアメリカの社会派パンクス諸氏。グリーン・デイのお祭り騒ぎにより今後ますますその傾向は強まりそうですが、さっそく中堅有力株のアンタイ・フラッグが手堅い作品をリリース。トム・モレロに見初められ、前作ではかのトニー・ヴィスコンティをプロデューサーに起用し、といった具合で着々とキャリアを重ねてきた彼らですが、今作はビッグ・ネームから離れて自分たちのみでハンドルを握り、完成させたアルバムだとか。特筆すべきは、やはりアグレッシヴなメッセージの数々。タイトルに目を通しただけでも、“大不況”とか“苦痛にあえぐ経済なんて死なせてしまえ”とか、ストレートすぎて降参するしかないです。そういったメッセージを単なる大言壮語に終わらせない、確固たる演奏力とエモーションを備えているあたりがこのバンドの強みなのでは、と思います。
■初心を取り戻させてくれる新人2枚
2. TLKY.『KIKIMIMI』(6月3日発売)キーボード×2、ドラム×1というユニークなメンバー構成で新次元ピアノ・ロックを鳴らすセンセーショナルな邦ニュー・カマー、TLKY.(テラコヤ)のファースト・ミニ・アルバム。ツイン・ピアノの持ち味をいかした軽快なジャズ・ナンバーから、超オールドスクールなファミコン・テクノまで弾きこなす変幻自在の音楽世界に舌を巻くことうけあい。この手の奇をてらった編成のバンドも何だか飽和状態だよなあ……とタカをくくっていた自分を張り倒してやりたい! ヴォーカルのAIKOの確かな歌唱力も大きな魅力のひとつで、ムーディな歌謡ナンバーもばっちり決まり、既に新人とは思えない貫禄が。今後がものすごく楽しみなバンドであります!
3. NEW CASSETTES『The Art Of...』(発売中)こちらは2005年にイギリスはノースハンプトンにて結成された5人組、ニュー・カセッツのメジャー・デビュー・アルバム。結成当初からストロークスの前座をつとめ、グラストンベリーの新人枠ステージで活躍し、英メディアはカイザー・チーフス、フューチャーヘッズ、ブロック・パーティらを引き合いに出して「今イギリスで最もエキサイティングな新人バンド!」と絶賛……という、なんだかそういうテンプレートがあるんじゃないかと思われるほど、いかにもなサクセス・ストーリーを歩んでいるそうで。音もまさに2000年代UKニュー・ウェイヴ・リバイバル勢のオイシイとこ取りといったかんじで、裏を返せばいまひとつオリジナリティが足りないかなあ、というのが正直な感想。ただ、アルバムの随所に今までありそうでなかったサウンドの原石もチラホラと見られ、これをもっとじっくり磨けば……と、確かな期待を感じさせる瞬間もあったり。個人的には先行シングル“You Won't Stop”のようなウィーザーがファンクに手を出したかんじにビビっと来ました。ヴォーカルもリヴァース・クオモ似。
■部屋の空気を一変させる3枚
4. The Present『The Way We Are』(日本盤6月3日発売)まだまだクールなブルックリン周辺より。NYインディ・シーンのキー・パーソンであるラスティ・サントスを中心として結成されたプロジェクト、プレゼントがセカンド・アルバムをリリースします。ラスティ・サントスはアニマル・コレクティヴやパンダ・ベアーを手がけた、ブルックリンの裏番長とでも言うべき存在。やや玄人好みなアンビエント作品ではありますが、その完成度は流石に超一流。多彩なノイズで彩られた音響が徐々に空間そのものを広げていき、音と音の間にある静寂が自然と見出せるような、えもいわれぬリスニング体験を約束してくれる傑作です。歌もビートもほとんどないので、最近のアニコレのようなトリップ感を期待している方は肩すかしをくらうかもしれませんが、こちらはこちらでまた違った世界に飛べることは間違いないです。
5. 遊佐未森『銀河手帳』(6月3日発売)デビューから21年、遊佐未森の25作目となるアルバムです。童話を思わせるレトロでクリアな歌声には、老若男女を問わず全日本人が不思議とやわらかなノスタルジーを感じてしまうはず。彼女の繊細な世界感を精密に再現するべく、アルバムに参加したゲスト陣にも要注目。プロデューサーの渡辺等をはじめとして、ゴンチチのゴンザレス三上、今堀恒雄、山木秀夫、佐野康夫といった、邦楽界の屋台骨を支えてきた名うてのミュージシャンが集結しております。日本歌謡界の粋ここに極まれり、といったかんじで、あくまで歌を中心に据えた無駄の一切ない職人的な音造りに脱帽。アルバムの発売にともなうコンサートも予定されているそうなので、是非足を運んでおきましょう。
6. JOAN OF ARC『Flowers』(日本盤6月3日発売予定)最後に紹介いたしますのは、ジョーン・オブ・アークの最新アルバム。今回の私的イチオシです! 昨年の日本公演を収録したDVDも同時に発売されるそうですよ。シカゴのアングラ・シーンを代表するバンドとしてポスト・ロックの歴史を更新し続けてきた彼らですが、本作でも見事に新境地を切り拓いてくれました。ポスト・ロックというとどうしてもエレクトリックなものを連想しがちですが、彼らは要所要所で大胆にアコギを弾いておりまして、その音色がまた絶妙! 特に3分に満たない楽曲がずらっと続くアルバム後半の密度は尋常ではなく、変拍子を刻む鉄琴に続いて、後期レッド・ツェッペリンを思わせる異国情緒たっぷりなギター・インストが鳴り響き、かと思えばヘヴィ・ロック党の筆者も納得のディストーション・ギターをフィーチャーした歌モノがあったりと、とにかくなんでもあり。おみそれいたしました。常にスタイルを変え続ける彼らを見習って、筆者も村上春樹作品の主人公からモテ要素を差っ引いたようなしょっぱい毎日を何とかしようと思います!といったところで本日はここまで。来週もお楽しみにー!
●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
『KIKIMIMI』





























