No.111 四苦八苦の果てに見た6枚
2009/02/24 | タグ:Charlie Wilson GOATBED GRANDMASTER FLASH LIVING THINGS 吉井和哉 坂本龍一
ネタがない……ネタがない……何のネタかって? 四文字熟語です。ターザン山本リスペクトで連載途中から四文字熟語をタイトル名に入れてきたのですが、四文字熟語のボキャブラリーが全然ないことに遅ればせながら気づいて、完全にジリ貧の様相。毎度、四苦八苦してひねり出してきたんですが………ん?あ!……ということで〈四苦八苦の果てに見た6枚〉と題して今週はお送りします。
■ネタ切れとは無縁の3枚
1. 坂本龍一『out of noise』(3月4日発売)ソロとしては5年ぶりになる坂本龍一のニューアルバム『out of noise』。ゲストとしてコーネリアス、高田漣、クリスチャン・フェネスといった面々が参加しているものの、その存在感は控えめ。強いて言うなら、古楽演奏集団フレットワークが目立つくらいでしょうか。ピアノを中心にすえた“to satanford”“composition 0919”の旋律、フィールド・レコーディング素材を生かした"tama"、“firewater”、“glacier”に見る音色、“hibari”や“disko”における擬似的な反復など、教授が長らく問題意識を取り組んできた要素が、さらにソリッドに追求されています。「ソロアルバムはそういうもんだ」といえばそれまでですが、かなりパーソナルな1作といえるでしょう。
2. Charlie Wilson『Uncle Charlie』(輸入盤:発売中/日本盤:3月4日発売)米R&B界のチャーリー・ウィルソンのニュー・アルバム『Uncle Charlie』は、ベテランさすがの懐の深さを感じさせます。スターゲイト印のイーブン・キックR&B“Back To Love”や、ロボ声Tペインとジェイミー・フォックスが参加した“Supa Sexxy”でオン・トレンドなナンバーを押さえる一方、“One Time”や“There Goes My Baby”などメロウ・チューンでは、チャーリー御大の滋味あふれるヴォーカルを堪能できます。美メロ楽曲でも音色が古臭くないのが良いですね。オーセンシティとアヴァンギャルドを軽やかに行き来する作品が、齢50をとうに過ぎたアーティストの新譜として出てくるあたり、現在進行形ブラコンの厚みをいまさらながら痛感した次第。ちなみに可愛らしいタイトルは“Let It Out”に参加しているスヌープ・ドッグが御大を呼ぶときのニックネームだとか。
3. GOATBED『V/A』今回の3枚の中で一番の驚きが、石井秀仁のソロ・ユニットGOATBEDのニュー・アルバム『V/A』。赤面寸前の絶妙アレンジ(特にシンセ・ベースがパナい)、死蔵されていた記憶を掘り起こすフレージング、吉川晃司ナイズされたヴォーカル(なにせ“モニカ”カヴァーしてた人ですから)。それらが絡み合うことで、凡百の80'sサウンドとは一線を画す高品質ポップスが生まれております。80'sリヴァイヴァル以降、ニュー・ウェイブ好きを公言するアーティストも多いですが、意外に見落とし(目をそらし)がちな、日本のアイドル・ソングまでを網羅したこの80's解釈は、日本人アーティストとしてかなり誠実なスタンスかと。石井はPerfumeあ~ちゃんの妹・西脇彩華とのカヴァー・プロジェクト(?)Ordinary Venusとしても活動しておりますが、エレ・ポップ好きを自認している方は、今後動向を追って損はないコンポーザーです。
さすがに四文字熟語、もうない! もーいやだ! 解散だ!(@爆笑問題・田中)ということで、今回で〈今週の5,6枚〉の我々の担当は終了になります。2007年末から若輩の2名(途中で人が変わってますが)のつたない連載におつきあいいただきありがとうございました。今週も残り後半3枚、お楽しみください。
■風ふきすさぶ3枚
少しはやめの春一番がふいたかと思いきや、急に寒波がやってきたり、とかく風の読めない今日この頃。体を崩しやすい時期なので大変ですが、めまぐるしく変わる風を味わうってのも、また一興ですよね。というわけで、ここからは高橋が今までにない風を感じさせてくれる注目の3枚をご紹介いたします。
4. 吉井和哉『VOLT』(3月18日発売)吉井和哉、ミーツ・ストーナー! すごいアルバムを作ってくれました。アメリカでレコーディングされた本作では、プロデューサーにクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、メルヴィンズ、フー・マンチューなど、数々のストーナー・バンドを手がけたジョー・バレシを起用。フックのある爆音リフを空の果てまで鳴らすストーナー・ロックならではの快感と、吉井和哉独特のだるくてエロくてずるいぐらいにかっこいい日本語感が、とてつもない化学反応を起こしています。砂漠の渇きを感じさせるQOTSA直系のギター・サウンドをバックに、キリっとした日本の冬の情景を歌うミス・マッチも絶妙です。日米の風が見事にクロスした本作は、往年の吉井和哉ファンはもちろんのこと、カイアスやマスターズ・オブ・リアリティなどジョシュ・オム周辺のものに無条件でムムッとくるストーナー好きも、絶対におさえておくべき一枚。“フロリダ”という楽曲では自ら「アメリカでホントのロックが鳴っちゃったんだよー」と歌っていますが、その言葉に偽りなし。文句なしにかっこいいアルバムでした。
5. GRANDMASTER FLASH『The Bridge』(日本盤:3月4日発売)少し前に〈ロック生誕50周年〉ってのが盛り上がっていましたが、ロックに限らずあらゆる音楽が必然的に年をとるわけでして、イケイケに思われているヒップホップだって今や〈アラサー〉。そんなの歴史の重みを感じさせてくれる偉大なオリジネイター、グランドマスター・フラッシュがニュー・アルバムをリリースします。昨年のフジロックでの来日に続く大事件です。なんといっても御大がニュー・アルバムを発表するのは20年ぶり。ジャストで赤ちゃんが成人してしまうほどの月日です。そんな復活作に華を添えるべく、Qティップ、スヌープ・ドッグ、バスタ・ライムスなど堂々たる顔ぶれが集結。ここ日本からもOZROSAURUSのMacchoが参加し、KRSワンなどと共にメインMCとしてクレジットされています。古の風を十分に感じられるメモリアルな作品ではありますが、古典回帰的ながんこさはほとんどなく、むしろ誰もが楽しめる最高水準のモダンなパーティ・アルバムに仕上がっており、その潔さに溜飲が下ります。ものすごい勢いで進歩を遂げたヒップホップ20年の歴史に思いを寄せつつ堪能しましょう。
6. LIVING THINGS『Habeas Corpus』(日本盤:3月25日発売)これは今後ブレイクしそうな予感。アメリカはセントルイス出身の4人組、リヴィング・シングスの通算6作目となるフル・アルバムが登場です。日本での知名度はまだそれほど高くありませんが、前作『Ahead Of The Lion』ではスティーヴ・アルビニのプロデュースを受けた注目株。ヴォーカリストのリリアン・ベルリンのたたずまいは、ストロークスのジュリアン・カサブランカを思わせるものがあり、カリスマ性も申し分なし。上手いことノイズで色付けされたスタイリッシュで洗練されたロックを鳴らす、なんとも正しく今風なバンドです。一見してそんなん腐るほどいるじゃねーか、ってかんじの芸風ですが、彼らはポリティカルなメッセージと、わりとダサめのロックンロールを根底に据えることでそのアイデンティティを確立。リフも歌メロもどこかで聴いたような感じではあるのですが、それがかえって気持ちよく、この手のおしゃれなバンドとしては珍しくヴェルヴェット・リヴォルヴァーやイーグルス・オブ・デス・メタルなどのベタベタなハード・ロック・バンドといっしょにツアーをやっていたりもします。なんとなく今年の夏フェスなんかで観られそうな気がするので、要注目ですよ。以上、春風とともにやってきた花粉に殺されかけながらも何とかお送りいたしました。次週もよろしくおねがいします!
●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です





























