No.103 円高不況をなんとか乗り切る6枚
2008/12/22 | タグ:Cradle Orchestra DEXPISTOLS Diplo Disoscillators The BPA 持田香織
冬と共にやってきました円高不況!……って、自分の周囲でも身も凍るような話が聞こえて……シャレになりません……「こんなときぐらい音楽が助けになれば」とほのかな思いをこめ、〈円高不況をなんとか乗り切る6枚〉と題して今週はお届けします。
●ふわふわ・ひたひた・ズブズブ、畳語が似合う3枚
1. 持田香織“雨のワルツ”(1月28日リリース)Every Little Thing、持田香織のソロ活動と聞いて。まず頭をよぎったのが「ELTとどう区別するのか?」ということ。そんな雑念の中、耳を傾けた“雨のワルツ”は、緩めのラテン・バラッド。かたやカップリング“Drop”は、フォーク・シンガーが覚えたてのスティール・ギターで奏でるハワイアンという趣で、両者ともに広くワールド・ミュージック的なアプローチ。ここに(ELTの古参ファンには意外に評判の悪いらしい)近年のモッチーのソフト・ボーカルが乗ることで、なんとも一言では形容しがたい楽曲が産まれています。気になる無国籍サウンドの出所は、モッチー敬愛のSAKEROCKと聞いて納得。今後も本作のように、共演者を迎える形になるのでしょうか?とにもかくにも、ELTとの差別化の懸念は払拭されており、ソロの船出にふさわしい1枚といえるでしょう。
2. Cradle Orchestra『Velvet Ballads』(1月10日リリース)プロデューサー瀬戸智樹とDJ Chikaのユニット、Cradleにバンド・メンバーを迎えたプロジェクトCradle Orchestra、初の作品集『Velvet Ballads』はなかなかどうして好盤。タリブ・クウェリ、ルーツのブラック・ソート、CLスムース、O.C.などフィーチャリング・ラッパーの豪華さもさることながら、特筆すべきは楽曲の打率の高さ。センチメンタルなストリングス&ピアノとエモーションをたたえるリズム。今ならさしずめDJ KAWASAKIとNujabesのミッシング・リンクといった感じでしょうか。そのクオリティたるや、友達の結婚式の帰り道にひとり寂しくなったアラサーOLから、踊り疲れた後、ふと不安に駆られた熟年クラバーまで、心にひだを持つすべての人の琴線をベンベン打ち鳴らしてくれることうけ合いです。
3. Diplo『Decent Work For Decent Pay: Collected Works: Vol.1』(1月26日リリース)いまや引く手数多のプロデューサー、ディプロ。今の地位に彼を押し上げたのは、そのあくなき探究心でしょう。バイレ・ファンキ、B-more、クンビアなど、さまざまなオブスキュア・サウンドを掘り起こし、換骨奪胎し、自らの手でアウトプットしていく手さばきこそが、MySpace以降星の数ほど現れた凡百のトラック・メイカーと彼を大きく隔てています。『Decent Work For Decent Pay: Collected Works: Vol.1』はディプロの過去発表作品を集めた編集盤。T.I."Swagger Like Us"にサンプリングされ、思わぬロング・ヒットになったM.I.A“Paper Planes”やボンヂ・ド・ホレ“Solta O Frango”などのプロデュース曲、ブロック・パーティー、ブラック・リップスといったロック方面のリミックス・ワークなど、八面六臂の活躍を刻んだ文字通りディプロのレコード(記録)。ゼロ年代のビート・メンターの入門盤に最適です。
とはいえ、不況のときにカルチャー方面では面白い作品が生まれる傾向があるのも、これまた事実。かく言ううちの編集長なんかも(おそらく円高も理由のひとつであろう)HMVのバカ安キャンペーンをエンジョイしてるみたいです(→ これ)。人生イロイロですな。後半3枚もお楽しみに。
●年末年始に盛り上がる3枚
4. Disoscillators『Last Rockers』(1月14日リリース)今年も残すところあと9日! 皆さんも忘年会、忘年会、そしてお次は新年会と東奔西走する日々だと思われます。そんなわけでここからの後半戦は私、三木が年末年始に盛り上がる3枚をお送りしたいと思います。まずはチバユウスケ(The Birthday)、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、LOW IQ 01、YOU THE ROCK★、THE ZOOT 16などの参加で話題の新プロジェクトDisoscillators(ディスオシレーターズ)のファースト・アルバム『Last Rockers』からスタート。そもそも何故こんなに豪華なアーティストが集結しているのかと言いますとプロデューサーが〈LONDON NITE〉でお馴染みのDJ Katchin'なのだそう。ということで聴いて納得、中身はまさしくロンナイそのもの! であります。MC5もイギー・ポップもクラッシュもジェットも全てがロンナイ風にリアレンジ。加えて本作はエレクトロ・クラッシュの要素も多分に含まれており、ロック一辺倒では無い最新型のロンナイを体現したかのような作品となっております。
5. DEXPISTOLS『ROC TRAX presents LESSON.05“SATURDAYS”』(12月24日リリース)続きましては向かうところ敵無しのパーティー・キング、DEXPISTOLS初のオリジナル・アルバム『ROC TRAX presents LESSON.05“SATURDAYS”』をご紹介。ゲストにはMademoiselle Yulia、GALBITCH、DJ YAN、GAINESなど彼らが主宰するレーベル〈ROC TRAX〉所属のアーティストが勢揃いしており、さながらレーベル・コンピの様な体裁となっています。肝心の内容の方はというと、以前からたびたび愛着を語っていたヒップホップの要素を彼らの代名詞エレクトロに大きく注入。MCにVERBAL(m-flo)を迎えたデ・ラ・ソウル“SATURDAYS”のカヴァーをはじめ、ダークでスタイリッシュなタテノリ・サウンドを披露し、引き出しの広さを見せてくれます。ジャスティスや2メニー・DJsに通じる絶妙のゴッタ煮感を感じつつ、無心で盛り上がれる1枚でありました。
6. The BPA『We're Gonna Need A Bigger Boat』(1月28日リリース)最後は世界一の盛り上げ上手、ノーマン・クックことファットボーイ・スリムの変名プロジェクト、ブライトン・ポート・オーソリティ(The BPA)の『We're Gonna Need A Bigger Boat』でお別れを。基本はブラジリアン、ラテンをエッセンスとしたお得意の4つ打ちサウンドなのですが、やはりそこはノーマン・クック。ポップで耳に残るメロディでグンッとハードルを下げ、全方位のリスナーを射程に収めています。現代版〈ええじゃないか〉と言っても過言ではないヤングからアダルトまで瞬時に巻き込むキャッチーさは長年の経験とセンスあってのものなのでしょう。なお、ゲスト陣もデヴィッド・バーン、ディジー・ラスカル、イギー・ポップ、ジャック・ペニャーテと豪華絢爛。もう忘年会なんて参加せずにハワイで盛り上がりたくなるほどにアッパーな仕上がりです。
それでは今週の5、6枚これにてお開きとさせていただきます。来週もお楽しみに!
●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
『Last Rockers』
『We're Gonna Need A Bigger Boat』





























“雨のワルツ”