No.094 深夜の6枚
2008/10/21 | タグ:Los Campesinos! Octave One SHAKALABBITS ビューティフルハミングバード 板尾創路 矢野顕子
夜になるとムズムズしてしまう。この季節、夏の思い出を忘れられずに(あるいは全くいい思い出がなかったため)、夏の残り香を探してつい平日から深夜の街を彷徨って飲みすぎてしまうセンチメンタルな男(30過ぎ)が多いという話を飲み屋のオッサンに聞いたことがあります。かくいう自分も先日西川口の飲み屋で偶然そのタイプの男に出会いまして、長々と甘酸っぱくも湿っぽい思い出話を……って、すみません。本当はそんな飲み屋も30過ぎの男も知らないんですが、タイトルに合わせて無理になんか書かねばと思って、嘘付いてしまいました。ですが、今回はそんな架空の思い出を引きずっている実在しないサラリーマンに向けて、という設定で深夜の6枚と題してお送りさせていただきます(なんか、意味わかんなくなってますけど)。
●即効性の高い夜の邦モノ2作
1. 板尾創路『ミュージック』(10月22日発売)まずは、板尾創路のミニ・アルバム『ミュージック』から。こちらの作品は、全編銀杏BOYZの峯田和伸が手がけた楽曲+板尾の歌詞によって構成されております。不毛でありながら物語性がある歌詞を、峯田氏がわかりやすく味付けした、といった内容でしょうか。中でも印象的なのは、“砂渡し爺”でしょう。ストーンズの“Paint It, Black”で全編フィーチャーされていたシタールをベンチャーズが取り入れ、イントロ&Aメロもストーンズから拝借して作られた渚ゆう子“京都の恋”を、わかりやすく匂わせたロック歌謡モノ。ストーンズがシタールを導入したのがそもそもビートルズのジョージ・ハリスンからの影響らしいので、ビートルズ → ストーンズ → ベンチャーズ → 渚ゆう子 → 銀杏BOYZ → 板尾創路という壮大なミュージック・ツリーを思い浮かべることができる曲なのではないかと。あ、そういう感じで聴いていると、続く“ホテル住まいの小学生”のイントロで使われているメロトロン風の音はビートルズStrawberry Fields Forever”かも……と、ついロックオヤジ特有の妄想が連鎖してしまうのでした。
2. SHAKALABBITS『SHAKALABBITS』(10月22日発売)続いては、女性ファッション誌でも活躍するヴォーカル、UKI嬢を擁するSHAKALABBITSの活動10周年盤『SHAKALABBITS』を。自分は、彼女たちに対して〈おしゃれで元気でパンキッシュなスカ・パンク・バンド〉的解釈をしていたのですが、本作は7拍子を含んだ変拍子曲、よく練られたアンサンブル、音像に対するこだわりなど、ストイックな音楽創作意欲が端々からビシビシ伝わってくる1枚でありました。さらにポップさも失っていないのが素晴らしい。妙にサイケ感の漂うジャケットも含め、新たなファンを獲得する作品となりえるのではないでしょうか。
●夜に踊れるロックとテクノな2作
3. Los Campesinos!『We Are Beautiful, We Are Doomed』(10月22日発売)「NME」や「Pitchfork」といった海外メディアにて絶賛されている、ロス・キャンペシーノス!のセカンド『We Are Beautiful, We Are Doomed』が、7ヵ月という短いスパンでリリースされます。やー、これはいいですねぇ。フィーリーズや初期トーキング・ヘッズのように、性急で、ごちゃごちゃしてて、ちょっと壊れた雰囲気があって、うさんくさい。ニワトリが鳴いてるような男性ヴォーカルや、アクセントとして使われたストリングスなどもとてもいい効果を発揮しております。あらゆる音がごちゃっと混ざっている曲が多いのですが、そんな中でもなにかのメロディーが1本通って聴こえる作りになってまして、音をコントロールする上手さも感じさせるのです。ライヴの評判もよいので、ぜひとも一度見てみたいものです。
4. OCTAVE ONE『Summers On Jupiter』(11月7日発売)がらっと趣向を変えて、デトロイト第2世代と言われる、オクターヴ・ワンの『Summers On Jupiter』を。「オクターヴ・ワンと言えば“Blackwater”でしょ」といった、自分のようにクラブ系にうとい人間でもハマる1枚といえましょう。“Blackwater”のアップデートを思わせるインスト“Life After Man”、ザ・デトロイトな“Suddenly Human”、“What A Revolution Is”など、テッキーとズブズブの中間をさまよいつつ酩酊に至る。極上のトラック揃いであります。端々に加えられた1滴のラテン系要素がなんともいい味を出しております。
●泣けて浸れる日本の夜の2作
5. ビューティフルハミングバード『HIBIKI』(11月5日発売)さて、またもや方向をガラッと変えまして、日本の歌もの2作を。まずはビューティフルハミングバードの『HIBIKI』から。大正時代に建てられた講堂を使ってレコーディングされたのだそう。アコースティックにこだわり、シンプルな編成の数少ない音数によって搾り出される音は、シンプルだからこその強さ・しなやかさが活きて聴こえてくるのです。カヴァー曲、荒井由実“瞳を閉じて”、カーペンターズ“Goodbye to Love”あたりのマッチングの良さはもちろん、レディオヘッド“No Surprises”、eastern youth“夜明けの歌”の解釈の面白さも、奇抜ではない落としどころがしっかりあって素晴らしい。オーガニック系(?)の評価が高いのはもちろんでしょうが、年配のうるさがたも黙らせる音楽濃度の高い作品です。
6. 矢野顕子『akiko』(10月22日発売)ラストは矢野顕子の『akiko』は、T・ボーン・バーネットをプロデューサーに迎えて制作された作品。ベースがあまり入っていない代わりに、マーク・リーボウが味のあるギターを加えているのがトピックとしては大きいのではないでしょうか。このギターがまた、マーク・リーボウにしては控え目でありながら、じわじわと沁みるいい音なのです。ドアーズ“People Are Strange”などは、ギターとヴォーカルの2人のヴァージョンも聴いてみたいと思わせるほどいいコンビネーションを聴かせてくれます。たまらん。もちろん、全体的なバランス、今の矢野顕子なりの渋さ(あるいは落ち着き)みたいなものも感じることができる良作でありました。
といった感じで今週もお送りいたしました。みなさん、よいナイトライフを! ではまた来週~。
●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です

























