No.078 酒と泪と男と女な6枚
2008/07/02 | タグ:80_pan HADOUKEN! kagami Littl'ans NINE INCH NAILS Sunburst Band
えー、先日オールナイトのイベントに出かけたのですが、飲みの席の後に伺ったこともあり、会場でかなりの酒を飲んでしまいまして、とんでもない醜態をさらしてしまったような気がするのです(未確認)。記憶があまりないので、なんともいえないのですが、某音楽業界の男性と舌を絡め合いながら〈レロレロ〉的なことを多くの人の前でしていたような……。実際にどうだったのかは怖くて確かめられないとはいえ、おっさん同士がレロレロし合っていた様子はあまりにひどく、恥ずかしいと思い、次の日は通常の二日酔いの倍の倍の頭痛でずっとうなされておりました。さて、今週の5,6枚は、そんな二日酔いを経験したことがある方はおわかりでしょうが、〈忘れてしまいたいことや、どうしようもない寂しさに包まれたとき〉に聴く6枚。略して、酒と泪と男と女な6枚と題してお送りいたします。
●自らを解体し続ける2組
1. NINE INCH NAILS『The Slip』(US盤は7月22日、日本盤は8月20日発売)まずご紹介するのは、トレント・レズナー先生率いるナイン・インチ・ネイルズのアルバム『The Slip』から。本作は、DRMなしで無料ダウンロードを実施したことで知られる作品のCD盤であります。無料と言いつつ、実は〈無料か5ドル〉を選べる形式になっておりまして、5ドル払ってダウンロードした人は20%に満たなかったことにトレント先生は憤慨していたのでした。でも、そりゃそうだろ。というわけで音に関しても言及してみます。んー、NINにしてはライト、そしてインダストリアル具合も思ったより軽め。歌ものといういう感じでしょうか。なかでも注目すべきは、“discipline”という曲名でありましょう。アラサー以上の世代にとって“discipline”というと、キンクリでもジャネジャクでもなく、100%の確立でスログリと相場が決まっているのです。それを踏まえた上でこのタイトルを付けるのは勇気がいることであったはず。自分はそこを評価したいのでありました(これ、アルバムの話してないですね)。
2. 80_pan『DISCO BABY』(7月2日発売)「なんですか、これ?」と、かつての活動を知っている人間が全員口にするのがこの80_panの新作『DISCO BABY』なのであります。迷走感は今年出た全てのCDのなかでダントツでありましょう。英ニュー・レイヴ・バンドシットディスコがプロデュースした1曲目“crazy”では、ヴォーカルがチョップされたり音量が妙に低かったりと、本人たちが完全に素材と化しているのですが面白い。全体的にヴォーカルを切り刻んだチョップ作だったらもっと面白かったのではないでしょうか。しかし、これまでのファンとメンバーの意思を全て置き去りにするこの過激っぷりはすごいもんがありますね。自分たちがなにをやっているのかに気づく前に、また彼女たちは別の形に変貌するのでしょう。
●デビュー作なのに話題騒然!な2組
3. HADOUKEN!『Music For An Accelerated Culture』(7月9日発売)さて、お次は2年連続でサマソニ出演が決まったハドウケン!のファースト・アルバム『Music For An Accelerated Culture』を。んー、ウソ臭い! でも、それが悪口にならないのがニュー・レイヴというムーヴメントなのでありましょう。プロディジーよりも勢い重視、音色はできるだけ軽く、享楽的であることをなによりも追及した音がこれ。ジュリアナ的な軽風俗感を持ちながら、多くの人を躍らせる、その軽薄な感じがとにかく凄いと思います。でも全部ウソ臭い! こういうニセモノ感がある人が沢山出てくると、音楽業界がにぎわっている感じがしていいなーと思うのです。もっともっと胡散臭いものを評価しましょう。
4. Littl'ans『Primitive World』(7月16日発売)ピート・ドハーティ(元リバティーンズ、現ベイビーシャンブルズ)が絶賛している4人組がこのリトランズであります。スカをやっても微妙に暗い。コーラスを入れてもなお暗い。ギターのコーラス系エフェクトがまた暗い。この感じは、なんですかね。初期ピンク・フロイドのようであります。暗いもの好きにはかなり刺さるのではないでしょうか。ディオールのデザイナー、エディ・スリマンに好かれていることも含めて〈現代のヴェルヴェット・アンダーグラウンド〉と資料には書かれていますが、ルー・リードはそんな歌い方しないだろ! みたいな突っ込みを、聴きながら入れてしまうのでした。
●ディスコを更新する2枚
5. kagami『Better Arts』(7月5日発売)続いては、DISCO TWINSでの活動や、電気グルーヴのライヴ・サポートなどでおなじみのDJにしてトラック・メイカー、kagamiのベスト・アルバム『BETTER ARTS』を。こちらの作品は2枚組なのですが、1枚目がラジオ形式、2枚目がセパレートされた楽曲が収録されるという少々変則的な編制であります。1枚目で聴くことができる地方のラジオ・パーソナリティ風の女性と、無理矢理な会話をするときのkagamiの朴訥とした受け答えも最高に面白いのですが、ミックスの所々に挟まれるギミックがなにより素晴らしい。DJミックスに、生のラジオをミックスする感じといいましょうか。会話と曲のカット・インやフェイド・アウトも娯楽化させようとしているのが伝わって参ります。手芸や工業部品の作成なんかでもそうですが、テクニックがものすごく向上すると、作業工程を見ているだけで面白かったりしますが、そういう感覚に近い面白さがあります。
6. Sunburst Band『Moving With The Shakers』(7月2日発売)さて最後の作品は、〈ジョイネグ〉の愛称でおなじみ、ジョーイ・ネグロさんがメイン・プロジェクトにしようとしている(らしい)サンバースト・バンドのアルバム『Moving With The Shakers』であります。04年にリリースされたアルバム『Until The End Of Time』が、ジャケットの安っぽさに反して素晴らしい出来だっただけにこちらも期待して問題ないでしょう。んー、きらびやかな味付け、ミドルに寄った音の配置、ロウな音色、どれを取ってもツボが抑えられている作品であります。ミドル・テンポなソウル~AOR風の“Our Lives”、デヴィッド・ボウイの曲をファンキーなディスコ解釈した“Fasion”あたりのギリギリでダサいんだけど、普遍性が詰め込まれた曲には誰も文句を言えないのではないでしょうか。いい!
はい、そんな感じでお送りした今週の5,6枚。いい音楽を聴くと、自分が過去にしてしまった恥ずかしい行為なんか吹き飛んでしまいますね。皆さんも、恥ずかしいことをしてしまったらすぐ音楽に逃げて、健全なリスニング・ライフを送りましょう。では、また来週~。
●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
『DISCO BABY』
『Primitive World』
『Better Arts』



















『The Slip』