No.074 剥き出しな6枚
2008/06/03 | タグ:KZA Romancrew SANTOGOLD THE FUTUREHEADS 久保田麻琴 原田郁子
私事ですが、最近いい具合に体臭が出てきております。青春なんか15年前に終わっているのですが、胸キュンにしがみ付いていたい気持ちはどこかにあるわけでして。でも、もうそういうキラメキも長い間なくなってくると、あきらめの境地になってくるわけですね。オッサンとしての矜持というものがあるだろうと。そういった感じで、今週はオッサンの剥き出し感にフィットする、剥き出しな6枚を選ばせていただきました(臭いを出しながら)。
形骸化した癒しをぶち壊す2枚
1. 原田郁子『ケモノと魔法』まずは、クラムボンのヴォーカル&キーボード担当、原田郁子のセカンド・ソロ・アルバム『ケモノと魔法』(6月4日発売)から。ピアノをメインとして、アコースティックな楽器を配したヴォーカル・アルバムであります。かなり簡単に書くとそうなるのですが、この作品はなんというか〈念〉がこもった作品という感じがいたします。スキマが多いのに濃密なのであります。弛緩したムードの合間に時折見える緊張の鋭さが尋常じゃないと言いましょうか。中でも、ほぼヴォーカルとピアノとSEのエコー処理のみで進行しつつ、スピリチュアル度が尋常じゃない“あいのこども”は、海外のフリージャズ~サイケ・マニアにも受ける逸品と言えそうです。
2. 久保田麻琴『Bali Dream』毎回このコーナーのネタを選ぶときには、10枚くらいは盤を用意してあるのですが、原田郁子の次がどうも見つかりません。ので、今週はこれにておしまい! というわけには行かないので、根気良く探したところ出てきたのがこちら。「バレアリックせんといかん!」の口癖でおなじみバレアリック伝道師こと(※誰もそんな言い方してません。口癖のくだりも嘘です)、久保田麻琴氏の新作『Bali Dream』(6月18日発売)であります。んー、これまたスピリチュアル。バリでのフィールド・レコーディング+ダウナー・ビート、といった感じでしょうか。ガムラン、ゲンゴン、ジェゴグが奏でる、どこかすっとぼけた不調律気味の音色に包まれる、ディープな音世界であります。氏の05年作『Spilit of healing ~Bali~』の続きものということなんでしょうが、1音1音の説得力がありすぎて、ゾクゾクして癒しどころではないのです。安東ウメ子の『IHUNKE』にも通じるトランス具合を味わうことができるのでした。
思わぬポップさを見せる2枚
3. SANTOGOLD『SANTOGOLD』さて、気を取り直して……というわけではないのですが、お次はもう少し現代風の音楽をご紹介いたします。英BBCが最も注目している〈ポストM.I.A.の最右翼〉サントゴールドさんのデビュー作『SANTOGOLD』(日本盤は7月9日発売)です。ポストM.I.A.と言われると、やはり攻撃的なベース音と、エキセントリックなヴォーカルなんかを想像しがちですが、このアルバムはバランスが取れたポップ作なのです。ブチ切れた女子がブチ切れた様子を音にしている、辺境ライオット・ガールみたいな動きがある中では、随分とおとなしい印象を受けました。中盤に行くにしたがってどんどんポップさがねじれていくものの、そこに破綻はなく、音のバランスも非常に優れております。〈リッター単位のよだれを垂れ流しながら歌う〉みたいな奇人を期待をしていた方には肩透かしかもしれませんが、ポップ作と割り切って聴くと、コーラスの入れ方も綺麗で、ちょっと80年代的なダサさも含んでいて、いい作品だと思います。
4. THE FUTUREHEADS『This Is Not The World』続いては、UKポスト・パンク・リヴァイヴァルの先陣を切ったバンド、フューチャーヘッズの2年ぶりとなるアルバム『This Is Not The World』(国内盤は6月18日発売)であります。キリング・ジョーク、オーブに参加していたユースがプロデュースしたアルバム。今回は、ものっすごく痛快な3分ロックが詰まっております。吹っ切れたようにポップで勢いがある。初期ジャムを再現したようなわかりやすくもさり気に凝ったメロディーも好印象。日和ってないけど、伝わりやすい。これは若者にグサッと刺さりそうです。売れても文句の付けようがないアルバムでありました。
わかってる2枚
5. KZA『STOCKS ON DECK』東京を代表するDJ/プロデューサー・ユニットFORCE OF NATUREのメンバーにして、世界屈指の12インチ・コレクター、KZA氏によるミックスがこちら『STOCKS ON DECK』(6月14日)です。音的にはなんでもあり、なんだけど一貫した美学があるCDであります。今の現場のモードであるところのミニマルを軸にしながら、ストイックになりすぎないバラエティ感が存分に含まれた作品と言えましょう。彼は、現場をただパッケージングすることにあまり意味を見つけていないのではないでしょうか。パーティーの感覚を残しながらも、部屋聴きもターゲットにしている感じがいたします。渋すぎない、ディープすぎない、その感じが心地よいのです。ヴォーカルもののバランスもその心地よさに拍車をかけているのでした。
6. Romancrew『DUCK'S MARKET』ラストは、黒さを追求するスーパークロイ集団、Romancrewのセカンド・フル・アルバム『DUCK'S MARKET』(6月11日発売)を。KREVA、コヤマシュウ(SCOOBIE DO)、CHIEF ROKKA(韻踏合組合)らが参加したこちらの作品。それだけでも豪華なのですが、本作で最も豪華なのはトラックでありましょう。ALI-KICKが手がけた楽曲群のロマンチックなこと! ドープからライトまで、ヒップホップのうまみと可能性を存分に味わえるのでした。これが売れて、若い女の子がさりげなく聴いてたら最高だと思います、ほんと。
といった感じで今週もお送りいたしました。なんつーか、オッサンになりました、という宣言が、オッサン化を体よく回避しているようで嫌なんですが、自分は100%オッサンなわけで、それを認めて音楽を聴くと、また違った楽しみがあるのでは?という提案がしたかったのです。「30過ぎてもう全然CD買わない」という人は大量にいますが、30過ぎてからのほうがCD買いまくってます。という人のほうが面白い人だと思うんです。自分もそういうオモシロおじさんになりたい。妙に切実感を漂わせながら、今週はおしまいなのでした。
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