No.070 喪失感を拭い去りたいときに聴きたい6枚
2008/05/08 | タグ:フラバルス 前園直樹 安藤裕子 小西康陽 旅団 稲森寿世 長谷川きよし 高橋透
終わった……。というわけで、遂に終わってしまいましたね、ゴールデン・ウィーク。そこまで期待していたわけでもないんですが、やはり長い休みは嬉しいもので、過ぎてみればあっという間でありました。今多くの人が抱えているのが、会社・学校にに行きたくない、できればずっと休みたい、毎日朝から酒を飲んで過ごしたい、といった願望から来る喪失感なのではないでしょうか。そんな気持ちはかなうはずもないのでもっと前向きに! といったわけで、今回は喪失感を拭い去りたいときに聴きたい6枚、と題してお送りさせていただこうかと思っております。
〈GIRL〉を歌った2作
1. 稲森寿世“GIRLS STYLE”まずご紹介するのは、最近よく聞くモデルさんのCDデビュー作。稲森寿世(いなもりひさよ)さんのシングル“Girls Style”(発売中)を。表題曲を冨田恵一が、カップリングの“ジェニーはご機嫌ななめ”を野崎良太(Jazztronik)が手がけております。共にエレポップをベースとしたものですが、前者がキレまくったストリングス使いの箱庭ポップス、後者がピコピコ系の上ものが大量に入った純正エレポップの現代版、といった感じでありましょうか。両者によるエレポップ解釈の比較もとても楽しいCDであります。そんな大物2人に挟まれながらも、稲森さんのヴォーカルの表情がまたよいのです。モデルという職業は自身のチャームを把握しているからでしょうか、自分の見せ方がわかっていらっしゃる感がバリバリに伝わってきます。ちなみに、CDのオビに書いている触れ込みは、〈次世代渋谷系GIRL“稲森寿世”デビュー!〉。言葉の意味はよくわかりませんが、とにかくすごい自信なのでした。
2. フラバルス『My Girl』お次は、極上ポップを作り上げる職人肌、黒田晃太郎のソロ・プロジェクト、フラバルスの2枚目『My Girl』(5月21日発売)。ストーリー・テラーとしての才能=妄想っぷりが爆発しつつ、優等生すぎる自分を打ち破ろうとする意思が感じられるアルバムであります。サビでシューゲイズするギター小僧宣言“My Girl”、ソウル・スピリットあふれる“また会う日まで”、ド・ポップスなメロディー展開の上手さが抜群の“恋のゆくえ”など、多芸さを悟られてしまう一歩手前で止めるつたなさの表現が非常に心地よいのです。この人は将来、なにかのきっかけで思いっきり今のリスナーを裏切る凄いものを作ってくれそうな気がいたします。
歌の良さを教えてくれる2作
3. 安藤裕子『chronicle.』不思議っ子っぽさをチラ付かせながらも、自身に対する批評性がものすごく高い。安藤裕子さんの新作『chronicle.』(5月21日発売)はそんな内容の大作であります。彼女の作品に見られる論理的に作り上げたものを感覚的に聴かせるということは、技術のみでできることではなく、もちろん「こんな感じ」的な甘い気分で作り上げることなんてとうてい無理でありましょう。サウンド・プロダクションの隙のなさからもそれは伝わってくるのです。論理的な思考は左脳派、感覚的な思考は右脳派とよく言われますが、このアルバムはどちらの脳もまんべんなく稼動した結果生まれたもので、彼女の脳をパカッと割った時に流れる音楽、という感じがいたします。Amazonでは、DVD付き初回限定盤のほうが安いのでご購入はそちらをどうぞ(→ 初回限定盤、通常盤)。
4. V.A.『うたとギター。ピアノ。ことば。』さて、お次はcolumbia*readymadeのレーベル・サンプラー『うたとギター。ピアノ。ことば。』(発売中)であります。人選、選曲共に、悪いものになるはずがないというずるい内容(詳細は→ こちら)。女性ヴォーカルものに関する小西氏の審美眼は言うまでもないので、ここでは男性ヴォーカルに関していくつか。男性ソロは長谷川きよしと前園直樹の2名のみでして、そのどちらも頑固で不器用で素直で、だからこその深い味わいがある。そんなタイプのヴォーカルを聴かせてくれるのです。中でも前園直樹は、原曲と比べてテンポを落とした自作曲“すてきなあなたに”を披露しておりまして、それが素晴らしいのであります。余韻まで美味しいアルバムと言えましょう。
耳を使ったトリップ体験な2枚
5. 旅団『Terra Incognita』一時のブーム時に比べて一段落した感がある日本のジャム・バンド・ブームですが、そんな中でもバリバリに存在感を放っている13人編成バンド、旅団がセカンド・アルバム『Terra Incognita』(発売中)をリリースしたしました。こういったバンドはライヴ観てなんぼでしょ、と言わんばかりにライヴを収めたアルバムであります。〈民族、インプロ、トライバル〉ジャム・バンドの3大キーワードはバッチリ押さえ、パーカッションを柱にグイグイと乗らせる構成であります。聴くとライヴに足を運びたくなる、ライヴの後でまたCDを聴きたくなる、CDを聴くとまた……という無限連鎖を起こすタイプのバンドでありましょう。
6. 高橋透『GODFATHER 10th ANNIVERSARY SPECIAL MIX VOL.1』日本にハウスを知らしめた張本人、高橋透氏によるミックスCD『GODFATHER 10th ANNIVERSARY SPECIAL MIX VOL.1』(5月14日発売)がお目見えです。宇川直宏氏主宰のウェアハウス・パーティー〈GODFATHER〉の10周年記念盤でして、その活動を総括する内容……かと思いきや、バリッバリに今の音が詰め込まれたフロア仕様のアルバムでした。ディープ・ハウスの不穏さ~ミニマルの叙情性を行ったり来たりしながら、気づいたらインナー・トリップしているような内容。ヒッピー感抜きで内面世界を描ききる感覚の鋭さは、やはり現場で体験せねば。ということで、5月16日に行われるGODFATHER10周年記念イベント(代官山UNIT)に伺ってみねば!という気になるのでありました。ちなみに、次作はMOODMANのミックスCDが控えているのだそうです。
こんな感じで今週もおしまい。来週も幅広くお伝えしたいと思います。では、さようなら~。
●今回紹介したディスクはこちら↓で購入することが可能です
『My Girl』
『chronicle.』
『うたとギター。ピアノ。ことば。』
『Terra Incognita』
























“GIRLS STYLE”