No.067 丁々発止!火花散る6枚
2008/04/14 | タグ:CAZALS SOIL&“PIMP”SESSIONS Superfly the band apart 相対性理論 阿部芙蓉美
2007年の一大ビーフ(罵り合い)といえば、カニエ・ウェスト『Graduation』vs 50セント『Curtis』のアルバム同日発売だったわけですが、自分に火の粉が降りかかってこないケンカの行方は気になります(←うわ、最低)。最近の注目は、いとうせいこうvs 潮匡人の「俺はTシャツ屋じゃねえぞ 2008」ビーフ(→ 詳しくはこちらとこちら)。いやはや〈火事と喧嘩は江戸の華〉とはよく言ったものですなぁ。ということで(?)今回は、丁々発止!火花散る6枚と題してお送りします。
古来より「女は強し」なことを再確認させてくれる3枚
1. 阿部芙蓉美『ブルーズ』「〈ブルース〉と〈ブルーズ〉どっちが正解か」これだけで何時間でも語れるというまことウッザいマニア親父がいるわけですが、シンガー・ソングライター阿部芙蓉美のデビュー・アルバムは『ブルーズ』(4月30日発売)で正解。なぜならジャンルではなく情緒としてのブルー、物憂げ感をすくい上げたアルバムだからであります。とはいえ、情念べっとりではございません。ときにストリング、ピアノまで含むものの、サウンド的はオーセンティックなバンド・スタイル。瑞々しく風通しの良いアルバムです。鼻からの音の抜け方が良いのか、ヴォーカルが伸び抜けてハスキーになる瞬間が艶っぽく、ヴォーカルを堪能できる1枚です。
2. 相対性理論『シフォン主義』初見ではどちらがバンド名か分からない相対性理論のミニ・アルバム『シフォン主義』(5月8日発売)。ネット界隈をにぎわしていた彼らの完売御礼自主制作盤が、リマスタリングの上、めでたく全国流通される運びになりました。タイトル、歌詞から溢れるコピー・センス、不思議ちゃんライクなヴォーカル、大塚愛とミドリがケンカしているところをギターポップが仲裁したようなサウンド。サブカル具合と楽曲のポップネスのブレンドが絶妙で、バチン!とはまれば、このままのスタイルで大化けしそうなバンドです。音楽とは全く関係ない話ですが、間違ってどこぞ社会学者にでも見つかったら、彼らをネタに小難しい論文のひとつも作られそうですな。
3. Superfly『Superfly』デビュー後にメンバーが脱退し、ヴォーカル越智志帆のひとりユニットになってしまった(あたりで、完全に情が移った)Superfly。オープニング・ナンバー“Hi-Five”のエア・チェック風イントロや、ロック華やかなりしころへ憧れと恋心がパラレルに進行する“1969”など、ファースト・アルバム『Superfly』(5月14日発売)は、ホワイト・ストライプスから“i spy i spy”で共演したジェットあたりまで続いた(音楽史上何度目かの)ロック・リヴァイヴァルの遅れてきた実力派といった仕上がり。完成度の高いアルバムのなかで特筆すべきは、ボーカリスト・越智の実力でしょう。〈パワフル〉と形容される彼女のボーカルですが力技一辺倒ではなく、実に様々な表情を持っており、野暮ったさ(≒ロック感)を洗練された形で提示するという離れ業をやってのけております。
……と、女性ボーカル作品ばかりがつづきましたが、ビーフといえばもうひとつ、〈en-taxi〉責任編集者論争(→ 詳しくはこちら)。これを忘れてました!柳美里行くところに軋轢あり(長塚圭史はとんだとばっちりだ)。文系女子こわ~い。さて、ここらでそろそろ相方にバトンタッチ。ギーク男子代表の彼が語るは、男性アーティストばかり3組。これで一安心。引き続きよろしくどうぞ。
攻める男たち、を味わう3枚
4. SOIL & “PIMP”SESSIONS『PLANET PIMP』それではここからは片山に変わりまして、どうにも鼻風邪が治らない三木がお送りいたします。前作『PIMPOINT』リリース以降、〈副島さんとピンカラ殺生S(詳細はこちら)〉やJ.A.Mなど別プロジェクトでの稼動が目立っていたSOIL &“PIMP”SESSIONS。まずは彼らの約1年2ヶ月ぶりのフル・アルバム『PLANET PIMP』(5月21日発売)をご紹介致します。昨年は世界一のジャズの祭典〈モントルー・ジャズ・フェスティバル〉やかの有名な〈グラストンベリー・フェスティバル2007〉にも出演を果たし、最早その実力は加護ちゃんの完全復帰よりも遥かに疑う余地なく確かなものとなっている彼ら。今作も熱く踊れる純度120%の〈Death Jazz〉であります。前作よりもジャズの基本に忠実な展開の楽曲が増えた分、ホーンとピアノが自由に跳ね回っているので全体としては、よりアダルトな雰囲気に、そしてよりカオスティックに。これ1枚でサッカー日本代表の何十倍も海外遠征の意義が感じられるグローバル・スタンダードな作品です。
5. CAZALS『What of Our Future』昨今どこに行っても耳にするキーワード〈Kitsune〉。いえいえ、お父さん、オシャレなうどん屋とかそういうことではございません! というわけで続いてはそんな今をトキめくレーベル〈Kitsune〉からリリースされる初のロック・バンド、カザルスのデビュー・アルバム『What of Our Future』(5月21日発売)であります。「さぞかし、オシャレな音なのでしょうなぁ~」などと思いつつ再生ボタンを押した筆者だったのですが、1曲目の“New Boy In Town”から面を食らいました。流れてきたのは若き日のリバティーンズを思わせる危うい旋律(ピート・ドハーティーと彼らは幼馴染なんだそうです)とアンドリューW.K.のような力強い歌声、そしてそこにヒッソリとプラスされたエレクトロなギターの音色とドラムループ。オシャレだけど土臭い、懐かしいけど新しいという禅問答のようなこの感覚はきっと若者の心をグイッと掴むこと間違いなしであります。狐に化かされたと思って聴いてみてはいかがでしょうか。
6. the band apart『adze of penguin』最後は現在のインディーズ・シーンにおいてナンバー・ワンの実力と人気を兼ね備えたバンドと言っても過言ではないthe band apart、通算4枚目となるアルバム『adze of penguin』(5月14日発売)。これ、すごいです。テンション・コードと細かい転調を多用した曲展開、それを支える抜群のテクニック、中毒性のあるリズム・ループ、胸キュン必須な歌声などなど、随所からバンドの好調さと音楽を楽しんでいる姿勢が窺えます。彼らのライヴは異常にカワイイ女の子が多いのですが、この音の格好良さを前にしてはそれも仕方なし。今作は、前作『alfred and cavity』よりもミドル・テンポの楽曲が増え、メロディの美しさが際立っている印象を受けました。キャバクラ好きの編集長が、バンアパのライヴでキャバクラ嬢的にケバいファンを大量に見たと興奮気味に言ってましたが、今回のアルバムでさらにそっち方面のファンも取り込んでしまうのは必須。彼らのライヴに行くのが益々楽しみになったのでありました。
といった具体で、今週はこの辺でお開きとさせていただきます。来週もお楽しみに!
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