RUSTIE、WEEKENDほか、南波一海が選ぶ6枚
RUSTIE、WEEKENDほか、南波一海が選ぶ6枚2011/08/17
ご存知の方も大勢いらっしゃると思いますが、先のロンドン暴動でUKのインディー・ミュージックを取り扱う最大手、PIASディストリビューションのフィジカル・ストックが多数焼失しました。プライヴェートでも仕事でもお世話になっていたレーベルが多いだけに本当にショックというほかありません。在庫はレーベルにとって文字通りの生命線です。このことで閉鎖に追い込まれるレーベルもあるだろうし、それがマーケットの更なる縮小を招き、遠いこの国の洋楽離れの問題にも拍車がかかるのではないか……、といった具合に様々な心配が頭をよぎります。そのことに対して自分ができることは本当に微細ではありますが、面白いインディペンデント音楽はできる限りサポートしていこうと改めて強く思った次第です。
1. RUSTIE『Glass Swords』(国内盤:10月1日発売、海外盤:10月10日発売予定)その火災で大打撃を被ったレーベルのひとつ、〈WARP〉(というテンションで紹介していくと暗くなってしまうのでここまでとします)から満を持してデビュー・アルバムを放つラスティー。あのハドソン・モホークと近しい間柄で、彼と共にグラスゴーからビーツ・シーンの未来を担うホープです。ハドモーに勝るとも劣らない無邪気でヤンキー感漂うエレクトロニック・ミュージックを展開。フュージョンの大仰さを感じさせるのも近いですね。相違点を挙げるとすると、よりダンサブルで頭悪そうなところでしょうか。無論最高です!
2. V.A.『LA JPN LA Vol.1』(配信中)東日本大震災のチャリティー・コンピ。ロサンゼルスと日本のプロデューサーが参加。DJ MITSU THE BEATSやINNER SCIENCE、デイム・ファンク、前回この項で紹介したサムアイアムなどがエクスクルーシヴ・トラックを提供しています。名が広く知られているかどうかは関係なしに並んだ創造的なトラックの数々を聴いていると、かつて〈Mo'Wax〉というUKのレーベルがコンパイルしたダウンテンポ集『Headz』を想い起こしました。端的に言うと、自由を感じました。27曲で900円というお徳用。データのみのリリースなので燃える心配ナシ!
3. RAS G『Down 2 Earth』(発売中)ビート界のサン・ラことラス・Gのアルバム。過去にMySpaceで聴けた曲が収録されていたり、最近のぶっとんだ作風とは異なる単純なサンプリング・ループが多く聴けることから、これは過去曲をコンパイルしたものなのではないかと推測しています。“I Love The 90's HipHop”なんて工夫のひとつもない曲名も飛び出す愛らしい彼のブレイクビーツが詰まっています。彼は曲中に「Oh Ras!」というシャウトをよく混ぜるんですが、このアルバムはしつこいくらい終始鳴っていてクラクラしました。
4. MARTYN『Ghost People』(国内盤:9月3日発売、海外盤:10月18日発売予定)続いては依然としてハイクオリティーのリリースが続くフライング・ロータスのレーベル〈Brainfeeder〉よりマーティンのセカンドを。元々ダブステップとテクノの合間を行き来していましたが、今回は更にダブステップの要素が減ってUKファンキー色が強くなった印象です。音楽に関する文章において〈ハイブリッド〉という言葉はややもすると否定的に使われがちですが(暗に〈どっちつかず〉をほのめかすことが多いですよね)、これはあえて(そしてもちろん良い意味で)ハイブリッドという言葉を使いたくなる音楽です。
5. MIKA VAINIO『Life (... It Eats You Up) 』(発売中)パン・ソニックの片割れ、ミカ・ヴァイニオの新作。ミカがどんどん攻撃的な側面を見せていったのは事実ですが(パン・ソニックも然り)、まさかギターの音をここまでフィーチャーするとは……。と驚いていたのも束の間、イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ“Open Up And Bleed”のカヴァーまで飛び出します。十数年前は最も地味なテクノ/ノイズをやっていた人なのに、今作ではすっかり普通にアツい奴です。これをさらりと出す〈Editions Mego〉は本当に良いレーベルだと思います。
6. WEEKEND『レジャー』(発売中)東京で活動する3MCのラップ・グループ、WEEKENDのセカンド・アルバム。若い世代(いや、彼らも十分に若いのですが)からはすっかり聴くことができなくなった、日本語ラップがかつて持っていたすわりの悪さ、歪な感覚を残していると言えば良いでしょうか。90年代的と言えるかもしれないですが、本人たちに懐古趣味はなさそうなので普通にやっていたらこうなったということなのでしょう。弛緩とズレを抱えたまま活動を続けていたら、それがいつの間にか愛すべき魅力に。アリでしょう!
南波一海
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