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iLL

2009/06/17 | タグ:

●他のミュージシャンの行動とか音楽の聴き方を見てると「あ、俺、違うのかも……」って思う

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――ここまでお話を聞いてきて、iLLでありナカコーさんの現在の気分みたいなものがなんとなく受け取れました。単に音源というよりは映像的なヴィジョンというか、それがナカコーさんのなかでいまのところ順調に満たされているような。

ナカコー 完全な状態ではないですけどね。バランスっていうのは、何かの拍子に崩れるものでもあるし。いわゆるネット世界的なものと、現実的なものと、その両立ひとつとっても大変な作業で。

――前者に対して、まったく価値を置かず、もしくは封殺的に圧力をかけるという事例もあるにはありますよね。

ナカコー どちらか一方を取るっていう判断もアリだとは思うんですよ。僕はできないけど。両方が存在してこそうまくまわることがあると思うので。

――その点において、なにかしら展望はありますか?

ナカコー いっぱいありますけど、現段階では僕ひとりでどうこうなる問題ではない気がしてます。(いまの枠組みやツールを利用したうえで)新しいことやりたいと思ったときに、単純な問題として、規制や障害があってできない。いざ企画を動かそうとして「あ、ここはさわっちゃいけない領域なんだ」みたいなこと、よくあるから。とくに著作権的なものとか。

――なるほど。そこに危機感はありますか?

ナカコー 危機感っていうより「面白いことができるはずのになんでやれないんだろう」っていうストレスが大きいですね。「企業がやってることが古い」とか「悪い」とはまったく思わないですし、個々に事情が複雑なのもわかる。ただ、僕の立場としては、いま現実にあるツールを使うともっと拡がるのに、もっと面白いのに……と思っているだけです。

――あえて、奥歯にものが挟まったまま進行します(笑)。とはいえ、声を荒げてる感じでもないのが新鮮。これに際して組合を作ったり、運動を起こしましょうみたいな気運が高まることはないんですか? たとえば宇川直宏氏(過去、映像作品『iLLusion by iLL』にてコラボレート)とかと酒を飲んでいるような場で(笑)。

ナカコー そんな気配はないですねぇ。宇川さんとは、そういう話はあまりしませんから。実現不可能のようなことを可能にしてしまう人ですからね宇川さんは(笑)。

――訊くのが間違いでしたね。

ナカコー 「いま、こういうの作っててー」、「え、マジ? ヤバイねー」っていう会話が多いかも。

――すごく観念的な話になってしまうんですが、スーパーカーの結成が1995年。ここまでさまざまな形態があったと思いますが、いまなおモチベーションを保ち続けるということ自体に、なにかしらのむずかしさは感じない?

ナカコー 僕の場合は、なにごとにおいても、楽しくなくなった瞬間に止めると思う。音や映像の制作、ライヴにしてもそう。ずっと前から、自分はミュージシャンっぽくないなと思ってますし。ギター弾きだからといって、新しいギターが欲しいとか……あまり思わないし。家にギターを置いてなかったりするし(笑)。他のミュージシャンの行動とか音楽の聴き方を見てると「あ、俺、違うのかも……」ってのは多いから。立ち位置的なことから、音楽まで含めて好きなのはやっぱりブライアン・イーノ(※2)っていう。あの人もミュージシャンではないし。自分でもノン・ミュージシャンだって言ってるし。そこに関してすごく自覚的な人。ふら~っとやってきて、ふら~っとU2のプロデュースしてヒットさせたら、またふら~っと一部の人にしかわからないようなアンビエントの世界に戻っていったり。

――ああ、いまさらこんなことを言うのはどうかと思うんですが、今回“Kiss”ってタイトルで新譜が出たんだから、「ナカコーさんの初めてのキスはいつだったんですか?」とか「どういうキスが理想ですか?」っていうインタヴューを浴びせてもよかったわけですよね(笑)。

ナカコー どこかのファッション誌で見そうだよね(笑)

――しかし、実際は極めて観念的になってしまう。これは我々がナカコーさんに導かれていると思っていて。それは面白いことだなあと。なにを言いたいかといえば、いま言ったような……「初キスについてコメントお願いします!」みたいな方が、じつはナカコーさんがやりやすかったとするなら、いまさらですが謝りますって話で。それはそれで意外性はあるけど、メンタリティーとしてはスッと腹に落ちるというか。

ナカコー いやいや(笑)。それはそれで、んー、いや、どうだろうな俺……。ああ、でもやっぱりキツイと思うなあ、そっちは。

(2009.05.18 神宮前YAMAHAにて)

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(※2)ブライアン・イーノ
 ロキシー・ミュージックのメンバーとして本格的に音楽活動をスタートし、デヴィッド・ボウイ、トーキング・ヘッズなどのプロデューサーとして知名度を上げ、アンビエント・ミュージックを世に知らしめたミュージシャン。自身をノン・ミュージシャンと呼んでいるが、裏方仕事のみではなく、ソロ作やコラボ作など、名前が前面にクレジットされた作品も多い。左画像は、08年にリリースされたデヴィッド・バーンとの共作『Everything That Happens Will Happen Today』。

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