浜野謙太 × BOSE
2010/01/15 | タグ:BOSE スチャダラパー 在日ファンク 浜野謙太
SAKEROCKのハマケンこと浜野謙太の身の上相談を、1年の長きにわたって引き受けてきたBOSE(スチャダラパー)。タイトルに〈浜田じゃなくて、浜野ですっ!〉と据えられたそのシリーズ企画は、ケータイラジオ番組(および「EYESCREAM」誌面)にて展開されていたものだ。聞いているこちらが恥ずかしいほど甘酸っぱいハマケンの質問、それにことごとくダメを出しながらも愛情を滲ませるBOSE氏という構図は、バカバカしさの一方でSM的な感動があり、ひとつのエンターテインメントとして完全にかたちを成していた。
そんなハマケンが、自身のファンク・バンド〈在日ファンク〉名義にて、いよいよファースト・アルバムを完成させた。かつて大先輩より授かった金言は、この作品にどれだけ活かされたのか、あるいは右から左に抜けてしまったのか。ふたりにあらためて検証してもらった。
・浜野謙太、BOSEの関連作品を紹介
●いやらしい感じは見え隠れするけど、カワイイの範疇に収まってる(BOSE)
BOSE(在日ファンクのアルバムを)さっそく聴いてきましたよ。
ハマケンどうでしたか……?
BOSE「ファースト・アルバムだな」という感じが出てて良かったよ。
ハマケンひとつ心配ごとがあるんすよ。
BOSEどんな?
ハマケンファンクってきっと古い音楽と思われてるじゃないですか。たとえば「ROCKIN' ON」を読んでるような若い人たちがこれを聴いたら「オジサンくさい」って思われるんじゃないかと。
BOSE考えすぎだよ。若いやつらがやってるって感じは音に出てるよ。
ハマケン僕、中学生くらいの人たちにも聴いてほしいんですけど、興味をもってくれますかね?
BOSEこういうヘンな曲を歌ってる連中はあまりいないし、少なくとも特殊ではあると思うから、引っかかりはあると思うよ(笑)。
ハマケン僕らの世代からすると「ヘンな歌詞で、ファンキーで」となると、面影ラッキーホールとかが思い浮かぶんですけど、僕よりもっと若い世代がどう思うのかすごく気になって。
BOSEたとえばSAKEROCKだと、“京都”のライヴ・ヴァージョンで、女の子たちがハマケンに続いて「キョート!」って言ってるよね。ああいうノリを想定すればいいんじゃないかな。
ハマケンあと、このアートワークも賭けだなと思ってるんです。
BOSEなるほどね、どっちに転ぶのかねえ。僕はオシャレだと思うよ、カッコいいじゃん。
ハマケンありがとうございます。もう高円寺みたいな感じは払拭したかったんです。
BOSEははは、まあね。まあね。
ハマケンとにかく聴いてもらえる段階までいけばいいですけど、聴かれもせず、敬遠されるんじゃないかって。それが怖くて。
BOSEカワイイとは思ってもらえるんじゃない?
ハマケンえ、カワイイ感じ、します?
BOSEカワイイと思うよ。ハマケンの邪悪な感じは見え隠れするけど。いや、邪悪っていうか、いやらしいっていうか。でも、たぶん全体としてカワイイの範疇に収まってるでしょ。在日ファンクって、ヴィジュアルで見るとバカバカしいじゃん。メンバーがタンクトップなのに、背の小さいバンマスがスーツでドタバタ走り回ってるわけだし。あとはハマケンが〈在日ファンクとはなんぞや〉という意図を、理路整然と説明できるかどうかだよ。
ハマケンそうですね。自信がないですね。
(一同、爆笑)
BOSEそこが惜しいんだよ。だって、カッコよく説明しようとすればできるわけじゃん。「これは、日本人である我々が、黒人の音楽であるファンクを、40年経ったいま、日本に甦らせるんだ」みたいな。
ハマケンうおお、カッコいい!
BOSE感心してる場合じゃなくってさあ。在日ファンクってそういう意味なんでしょ? 日本人であることを意識しながらのファンクってことを表明してるわけでしょ?
ハマケンそうです、そうです。
BOSEなのに、歌詞でもインタビューでも、ヒトコトも言えてないじゃん。そういう曲がひとつでもあれば、リスナーも「ああ、なるほどね」ってなるわけでさ。
ハマケン言ってることはわかりますけど、それも大変なんですよ。
BOSE大変なんですよ……じゃないよ(笑)。そこがハマケンの至らないところだよ。スチャダラパーだって「日本でラップって?」の意図を説明しなきゃならないってことでは同じなんだから。
ハマケンたしかに、そうですよねえ。スチャダラパーのリリックを聴いてると素直に共感できるんですよね。
BOSEたとえばさ、ハマケンは「ベイビッ、ハッ!」とか言ってるわけじゃん?
ハマケン言ってますね。
BOSEひとつアイデアを言うと、この「ベイビッ、ハッ!」って声をハマケンなりの言葉に置き換えてみるとかどう?
ハマケン「ギロッポンっ!」……とかではなくて。
BOSE……でなくて。なにかそういうものを発明しちゃえば強いと思うよ。いまでも近いものはあるんだけど、よりによって、なんで「最北端!」になっちゃうのかねえ(笑)。
ハマケン聴いて「これはいいぞ」と思える部分ってありましたか?
BOSE“きず”や“罪悪感”の切り口はいいよね。だから、もうちょい頑張れと思う。
ハマケン説明しきれてないってことですかね?
BOSEもう少し、最後の部分のポエムが欲しいよね。
ハマケン「こいつ上手いこと言ったな」みたいなこと?
●〈次で化ける〉、と前々から言われ続けてますよね……(ハマケン)
BOSE聴き終わったときに「これ、いい歌だったかもしんない」って感じさせる工夫の部分。そこがまだちょっと弱いんだよ。“きず”も“罪悪感”もいい曲だよ。いいんだけど、最後「アレッ?」って終わっちゃうんだよ。
ハマケンやり逃げみたいになってますか?
BOSE最初のインパクトのまま終わってるんだね。そこはテクニックが必要でさ。たとえば“のこってしまった”なんかも「もしかして、これはラヴ・ソング?」と錯覚させるような含みを持たせてみるとか。
ハマケンなるほど! 最後に「そういうことだったのか」って半分わかるみたいな。
BOSEそうそう。そんな仕掛けがあれば、もっと飛躍するのかなって。バンドのほかのメンバーはなんて言ってるの?
ハマケン40代のサックス奏者がいるんですけど、その人は「はっきり言って、俺は在日ファンクの歌詞はわかんねえ」って言ってて。
BOSEははは! だったら次は、その人に「お、いいこと言ってるんじゃないの?」と思わせることを目標にするとかね。
ハマケン前にもBOSEさんが「特定の誰かに聴かせることを想定するのが大事」みたいな話をしてくれましたよね。
BOSE言ったね。バンドのメンバーでもいいし、友だちでもいいし。そういうモチベーションを得ることで変わってくるから。
ハマケンごく個人的なところでいいわけですよね?
BOSEうん、「あいつをこのフレーズでニヤッとさせてやる」とかね。
ハマケンいやー、歌詞って本当にむずかしいですね。
BOSE何度も言うけど、いい切り口はあるんだよ。“ダンボール肉まん”だって、かなりいいと思うし。ただ、中身がなにもないんだよ(笑)。ファンクだから〈なにもない〉っていうのがアリなのもわかるよ。JBを聴いて「この人、なにも言ってないじゃん」みたいな印象もあるわけでしょ。でも、あれは〈黒人であるJBがポップスのシーンをひっくり返す〉みたいな、別のところに大きなテーマが存在するわけ。だから〈なにもない〉でもいいのよ。
ハマケンたしかに……。
BOSE次で、日本人のハマケンが「ベイビッ!」とか叫んでることの意味が、歌詞につながっていけば化けると思う。
ハマケン〈次で化ける〉、と前々から言われ続けてますよね……。
(一同、爆笑)
BOSEステキな曲を歌えそうな雰囲気はあるんだから。
ハマケン雰囲気(笑)。
BOSEステキ風だけど、まだステキにはなりきれてないから。いろいろな球を投げまくってる段階だし。
ハマケンいろんな球を投げること自体はOKですか?
BOSEいいんじゃないの。ファースト・アルバムって、そういうものでしょ。
ハマケンBOSEさんが歌詞を書くとき、意識してることってあります?
BOSEどこかで普遍性というか、ポピュラリティみたいなものがあったほうがいいよね。自分だけにしか理解できないような世界は書かない。ライミングが面白いとか、言葉のならびが面白いってだけだと、ただ単に〈ギター上手いやつが好き勝手にソロを弾いただけ〉みたいなことになっちゃう。そのへん微妙な話ではあるけどね。
ハマケン書いている途中で人に見せたりします?
BOSEするよ。アニとかに見せて反応をうかがったり。ハマケンはしないの?
ハマケンひとりで書きますね。
BOSEせっかくバンドなんだから意見を聞いてみたらいいじゃん。しかもファンクなんだからさ、演奏しながら決めてみるとか。
ハマケン書いてる最中は〈俺に触れないでくれ〉みたいな空気になっちゃうんですよね。で、できたものを発表するときは本当に恥ずかしくて。
BOSEそこは乗り越えなきゃいけないんじゃないの? でも、恥ずかしいとか言いながら〈忠臣蔵の討ち入りに乗りきれず〉とかって詞を書いちゃうわけでしょ?(笑)
ハマケン“のこってしまった”に関しては、本当にそういう夢を見たんですよ。
BOSE見たんだ(笑)。
ハマケン〈男子は祭りのあとに、みんな自殺しなきゃいけない〉っていうしきたりがあって。そんなこと言われたら、誰もが〈おかしいぞ〉って思うじゃないですか。なのに、みんなしきたりを守って死んでいくんです。そうやって星野くん(註:SAKEROCKのリーダー・星野源)も火のなかに飛び込んでいくんですけど、目が覚めて厳しい気持ちになって、それを歌ったんですよね。
(一同、爆笑)
BOSE共感しにくいよねー。〈忠臣蔵の討ち入りに乗りきれず〉って歌われて、「自分にもそういう気持ちあるよな」と思う人は少ないと思うよ(笑)。ハマケンの気持ちをハマケンなりの言葉で歌うのはいいんだけど、それでいて、さらにまわりの人たちも「アッ」と言えることって、あるはずだから。
●自覚してないから、SAKEROCKでも星野くんに怒られるんだよ!(BOSE)
ハマケンBOSEさんは、自分の表現に恥ずかしさを感じるときとか、ないんですか?
BOSEあるよ、そりゃあるよ。だって、ラップだよ? 冷静に考えて「うわ、ラップって……」ってなもんでしょ。最初はそれこそ羞恥心のみでやるしかなかったよ。で、それを乗り越えるために、自分が納得できるなにかを一生懸命考えるわけで。
ハマケン突き詰めていけば、恥ずかしさがなくなるところまで行けるんですか?
BOSE行かなきゃダメだね。んで、いったんそこまで行くと、逆に「恥ずかしいほうがいいじゃん」という境地にだって行けるわけだよ。
ハマケンおお、そうですか。なるほど。
BOSEたとえばさ、「エブリバディ、セイ、ホー!」ってのがあるじゃん。あれが恥ずかしくて言えないとする。そこで「セイ、おいーっす!」が発明されるわけだけれど、そうなってくると、なにかが自分のなかでひっくり返るんだよ。ヒップホップからドリフにつながって、いかりや長介ってヒップホップだったんだ、と。くだらないかもしれないけど、そんなことを思えた瞬間にパッと視界が開けるんだよ。要は、オリジナルなものになってしまえば、文句も言われなくなる。「ハマケンだから仕方ないや」と思わせたら勝ちでしょ。
ハマケン深いっすねえ。
BOSEところで、ひとつ気になるんだけどさ、ファンクってサウンド的には繰り返しが基本だよね。在日ファンクの音ってどうやって作ってんの?
ハマケンJBとかは、セッションさせて、いいと思ったところを繰り返させて、そこにわがままな歌詞を乗っけるわけですよね。でも、僕はSAKEROCKと同じように、サウンドも歌詞も事前にガッツリ作っていくんですよ。
BOSEセッションで作ってみないの?
ハマケンファンクだからアヴァンギャルドなものは作りたいんですけど〈演奏によるアヴァンギャルドなもの〉はそれこそJBとかオーサカ=モノレールがやっちゃってるんじゃないかなと。あと、自由な発想を持った黒人にはきっと敵わないだろうというのも正直あって、僕は別のかたちでアヴァンギャルド感を出していくべきかなって。
BOSEなるほどー(笑)。
ハマケンたとえばSAKEROCKを聴いた女の子たちが「いいねー」って言うのは自分でも納得できるんですよ。サウンドがジャジーでステキなので。でも「在日ファンクは?」となると、そこが想像できない。ミクスチャー的な気分というよりは、ずばり〈男らしい〉と思われちゃうんじゃないかと。
BOSEさっきから、そこがよくわからないんだよ。どうなんだろう。たとえばさ、女の子におすすめのコンピを作って聴かせたいと思ったとき、男はついデルフォニックスみたいなメロウなものばかり入れちゃうわけ。でも、結果としては、よっぽどJBみたいな曲のほうが喜ばれたりすることって多々あるんだよ。
ハマケンえ?
BOSE意外とそういうもんなんだよ。〈男の想像する女の子〉ってじつは間違ってたり。
ハマケンでも、たとえばJBにしても〈黒人が立ち上がるために〉みたいな歌詞の和訳まで見ちゃったら、反応も変わっちゃうと思うんです。在日ファンクが日本語でやる以上、そこを考えちゃって。
BOSEだったら、なおさらハマケンが〈黒人が立ち上がるために〉の部分を、自分なりに置き換えなきゃダメだよね。ずっと言ってることだけどさ。ただ、そのひねりはすでに、今回のアルバムにだって入ってるよ。まあ、ちゃんと計算してやってるのかどうかは疑わしいけど。
ハマケン「どっちに行ったらいいのかな?」って、わからなくなるときがあるんですよ。
BOSEひとまず作品を出したことによってわかることもあるから。このアルバムを受け止めた人が、なにかしら意見をくれたり、一緒にやろうって言ってくれたりするかもしれない。で、あとはさ、〈どこまでが成功で、どこからが課題なのか〉みたいなことを、ハマケンが自覚できるかどうかじゃないの? ハマケンはそこができないから、SAKEROCKでも星野くんに怒られるんだよ。
ハマケンいちばん難しいところなんですよね……。
BOSE在日ファンクはハマケンのバンドなんだからさ、そのへんもリーダーシップを発揮していかないとさ。
ハマケン当初、レーベルから「在日ファンクっていう名前はNG」と言われて、メンバーに「大吉ファンクでいきます」って言ったらすげえ怒られましたよ。
(一同、爆笑)
BOSEほんっとバカだよね。大吉ファンクになった時点で解散だよ。意図、グラグラだもの(笑)。メンバーは在日ファンクだからこそやってたんだと思うよ。
ハマケンまさにそのとおりだったみたいで。でも、そのとき、ちょっと安心したんですよね。〈いちおうバンドだったんだ〉って。
BOSE自覚してないところがすごいよ。
ハマケンいまの気持ちとしては、すぐにでも次のアルバム出したいっすね。
BOSEいいじゃん、出しなよ。次回はぜひ今日話した歌詞のこと、考えてみてよ。
ハマケン……これからBOSEさんの家、行ってもいいっすか?
BOSEやだよ!(笑)
(2009.12.18 エンターブレインにて)
OOPS! インタビュー の最新記事






























