No.258 名古屋の至宝、TEASIの『SANDO』
2010/05/26 | タグ:TEASI
名古屋の至宝、TEASIの3枚目のアルバム『SANDO』。今年の2月にリリースされたものなのに、なんとなく聴き流しちゃうのが嫌で、ひとりでゆっくり聴けるときに……と手元であたためてたら、はや3か月が経ってしまった。
さて、いよいよという気持ちで再生ボタンを押すと、ふわり、いっぺいくんのあたたかな唄声が舞い降りる。構成はギター、ベース、ピアノ、ドラムと至ってシンプル。音数も必要不可欠なだけにそぎ落とされているのに、だからこそ無限の広がりと深みを描き出すアンサンブルと淡々と艶やかな唄声が織りなす世界。その目の前に存在するすべてを肯定してしまうような底知れぬ包容力は、やはりTEASIならではの持ち味でしょう。
前作『壁新聞』はともすれば孤高というか、一音も(いや、無音こそ!)聴き漏らせないような緊張感があったけれど、今回のアルバムはそんな音の揺るぎなさや余白の豊かさはそのままに、部屋の雑音(台所の水音や子供の声etc...)と混ざってもオッケーな大らかさがあるのも、いまの私には嬉しいかぎり。たまになにげなく水を飲んで、初めてものすごくのどが乾いていた自分に気づくといったことがあるけれど、TEASIの音楽はまさにそんな感じ。身体にすっと浸透し、生命の在り処をそっと知らせる音の心地良さたるや、ひとりで享受するのがもったいないほどで、おもわず庭の木々や花や虫にも聴かせたくなって、窓を開け放ってしまった。
そんな正真正銘のアンビエント=TEASIの音楽の個性を決定づけているのが、前作に引き続いての稲田誠(PAAP、ブラジル、Susperia)による録音・ミックス。一音一音が繊細に、しかし力強く響き合う楽器、がらんと広い空間のすぐ耳元で唄われているようなヴォーカルの不思議な距離感、音と無音の緻密で劇的なコントラスト――といった質感にこだわり抜いた音作りは、芸術作品としての録音物への求心力が失われつつある時代に、その可能性を改めて知らしめるかの素晴らしさ。
聴き進めるにつれ、心がしんと静かになり、ゆっくりと幸福感に満たされ、聴き終わった後にはふと空なんかを見上げたくなる。自分に必要なものを知っている人たちの強くてやさしい音楽がここにあります。
・TEASI オフィシャルサイト・TEASIの作品を紹介
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