No.227 根本敬の『真理先生』は今どき珍しい王道(スタンダード)の純文学だ
2009/03/11 | タグ:根本敬
根本敬さんの待望の新刊「真理先生」を送っていただきました。2004年「en-taxi」に掲載された処女小説「小説」を中心に、未発表のエッセイから幻の結婚披露宴挨拶文、雑誌「アックス」の近況文まで、各種よりすぐったテキストにて構成された一冊。これまでのカオティックな根本関連本とは対極ともいえる体裁(中もなんと〈ちゃんとした〉活字のみ!)からも察せるように、さらなるステージへの突入を予感させる。
〈業の深い=因果な人をネタにメシを喰ってる〉と思われがちな根本さん(それはある部分では正しい)だが、もちろんご本人もそれとはまた違った意味での業を抱えられているわけで。本書では、カタギの生活に背を向けたような活動をしていながら、50歳目前にして双子の父親になるなど、根本さん自身の因果が昭和の無頼派文学ばりの淡々さで綴られているのが興味深い。
また、「ストーンズのライヴ(確かめに行ったもの)」なる章では、「やがて己の立ち位置と距離感をィ謝った「弱い者」から、本能的に罠に落として喰い潰し、生命力を、また才能をも、盗むのではなく吸収してしまうものだ」と因果宇宙のパワーバランスについて言及。自らの作家としての業を引き受け、「でも、やるんだよ」という氏の立ち位置は、誤解を怖れずいえば〈ロック〉であり、〈すべての生命は他の生命を犠牲にして生きている〉という宇宙的真理を思い起こさせてくれる。
「墓場の鬼太郎」から「ゲゲゲの鬼太郎」への変容について語った上で、近年の少年犯罪について「幾ら〈心の闇〉がどーしたこーしたと議論しようと、肝心の〈心の闇〉が奴らにはないのです。全部電燈つけっ放し」とサラッと言い放つなど、あちらこちらにポンと膝を打ちたくなる〈真理〉がゴロリ。
武者小路実篤の「真理先生」とは真逆のアプローチでもって〈善人〉を描き、清濁併せ呑んで人間を肯定してみせる根本敬は、漫画界の極北であり〈サブカル〉であると同時に、今どき珍しい王道(スタンダード)の純文学なのである。
・根本敬の関連作品を紹介
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