No.217 それはまるで映画のような〈あらかじめ決められた恋人たちへ〉
2008/10/14 | タグ:あらかじめ決められた恋人たちへ
池永正ニ率いるダブポップ・ユニット、あらかじめ決められた恋人たちへのサード・アルバム『カラ』を現在メンバーとして参加しているベースの劔くんのおかげで、ひと足お先に聴かせてもらいました。
大阪から東京へと拠点を移して以降、ますます凶暴にセンチメンタルに加速している〈あら恋〉ワールドですが、本盤ではもはやダブポップというジャンルはおろか、「音楽」という枠すら超えた壮大な風景を描き出した大名盤!
一曲目。ペンペンズのモタコの絶叫が銃声さながら鳴り響き、エイドリアン・シャーウッドばりの強烈なビートが繰り出されるオープニングから、イッキに〈ここではないどこか〉へ持っていかれる。ダブ、エレクトロニカ、サイケ、フォーク、ポップス、ソフトロック、ノイズetc……といった膨大なマテリアルが矢継ぎ早にコラージュされてゆくサウンドは、危険なまでにスリリング――かと思えば、牧歌的なほど穏やかで心地良く、そんな緩急に満ちたシーンの連鎖がやがてひとつの物語を描き出すさまは、あたかも映画を見るよう。全編を包み込むように漂う、美しいピアニカの音色もまだみぬ郷愁を喚起してやみません。
たとえば、がむしゃらに走るだとか、ほうけたように立ち尽くすとか、一見なんでもないシーンがどうしようもなく心を捕えて離さないことがある。〈あら恋〉の音楽には、そんな演奏の技巧や方法論では生み出せない、本人たちの意図すら超えた「奇跡の瞬間」が確かに宿っている。不穏かつ混沌としたなかにピュアな狂気やイノセントな郷愁がフラッシュバックのように煌めくリスニング感は、MUTE BEATやマイブラ、ダイナソーJr.に通じるものもあり。このやるせない切なさは、まさに男性だけのもの。ゴリッとした違和感やザラついた皮膚感覚をもちながらも、音楽として非常に洗練されたクオリティに到達している点にも驚かされるものがありました。
〈from〉なのか〈shell〉なのか〈empty〉なのか〈dry〉なのか……といった、アルバム・タイトルの『カラ』も、いかにも“あら恋”らしい。聴き終わった後も、夢覚めやらず……な深い余韻と違和感を残す、そんな一枚です。
●あらかじめ決められた恋人たちへ関連作品を紹介
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