No.198 2008年前半、超越歌謡イッキ聴き
2008/04/30 | タグ:岡崎広志 松岡きっこ 藤竜也 青樹亜依 麻吹淳子
関西の情報誌「エルマガジン」で毎月、歌謡番として新旧歌謡曲の新譜レヴューを担当しています。で、今回は宇多田ヒカルや平井堅やジェロなんかと一緒に、こんなものまで……という最近の〈掘り出し物〉を一挙にご紹介。
『CARNAVAL -響宴-』は「野良猫ロック」、「愛のコリーダ」の口髭のダンディ、藤竜也の'84年ブラジル録音。加藤和彦、松岡直也、大野雄二といった豪華作家&プレイヤー陣による洒脱なラテン~ボッサ・サウンドは、カフェ・ミュージックを経た今こそ、その贅沢さがわかるというもの。その珠玉の輝きに藤のオヤジのカラオケさながらの自然体ボーカルがハレーションを起こし、異空間にあなたを誘う……。ある意味、これぞエキゾ。
『イージーリスニングの世界』は名ヴォーカリスト/サックス・プレイヤーの岡崎広志(現・岡田愛詩)が結成した伝説的グループの名盤。アーティスト名でピンと来なくても、コモエスタ八重樫がレディメイドからコンピをリリースしていた……といえば、雰囲気は伝わる? ボサノヴァのヒット曲やスタンダードを「11PM」の名コンビ、伊集加代子を迎えて録音。小西康陽関連の音楽を例に出すまでもなく、ここまで極端にソフィスティケイトされた音楽って現代ではフェイクでしかあり得ないわけで。ラウンジ・ブームも懐かしき……な今こそ昭和のジャズメンたちの粋に酔いしれたい。
昭和のお色気シンボル、松岡きっこの『ラブ・ラブ25時』は「11PM」繋がりで(私の世代にはむしろ「独占!女の60分」の、なんですけど)。田辺信一とアルフレッド・ザ・グレイト・プラスによるヒット歌謡の演奏にのせて「男と女 神様ってものは本当にやっかいなものをお作りになったわ」といった甘いナレーション・ドラマが展開される。軽快なシンセとしっとりアダルト~なサックスの音色で昭和の夜に貴方をワープ!
同様のお色気ムードものとしては、にっかつでSM界のイングリッド・バーグマンと評された麻吹淳子の『愛の奴隷』も。演歌系の有名曲のインストをバックに倒錯的ドラマが繰り広げられます。こちらは1980年ごろビクターレコードより発売された〈よるのドライバー・シリーズ〉と呼ばれる長距離トラック運転手の為のカセットテープ音源のCD化だそうで、ムチが唸る倒錯的世界に今はなきロマンの香りがムンムンと……。
こういう〈歌う有名人の珍盤〉って、精神的にも経済的にもイケイケの時代だったからこそ実現しえたわけで、最近ではなかなかお目にかかれませんが、願わくば、叶姉妹あたりにがんばって頂きたい(ケン月影を地で行くニョタクにシビれた!)。
そういう意味で、幻の名盤開放歌集『アンドロメダの異星人』でモンドファンを戦慄させた青樹亜依の“大空へむかって”は奇跡の新録と言えるのかも。シングル盤ながらも、弘田三枝子風と言えなくもないカマトト×コブシの効いたボーカルによるビュ―ティフル歌謡の表題曲に加え、“メルヘン世界”、“焼鳥サンバ”の08ヴァージョンを収録したお得な一枚。ラストの「コケコッコ~!」は宇宙との交信の声? 太陽のごとく朗らかなブラックホール歌謡です。
・文中に登場したアーティストの作品を紹介
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