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井口啓子の西日本ロック紀行

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No.156「ヒゲの未亡人」の夢は夜ひらく……

2007/07/03

Text: 井口啓子(SUPER!)

 先日、ギャングボル&ミットという人たちの来日イベントに行ってきました。超キュートなオリジナルのアニメーションにあわせて、キッチュで破壊的な打ち込みとシャンソン風味の歌がミュージカル仕立てで展開される様は、同じくフランスのドラジビュスにも通じる感じ。はたまた、一歩間違えば学芸会な、ゆるくもヤヴァィ男子ふたりワールドという意味では、〈フランス版・おばけじゃー〉と云えなくもない? キュートな仏青年が日本人の観客を前に恥ずかしげもなく猫耳を付けて無邪気に歌い、ぴょんぴょん飛び跳ねて戯れる様は、なかなかに〈萌えー〉でした。キュートに見せかけて、歌詞にもいろんな毒が仕込んであるようで、意味がわかったらもっと深いレベルで楽しめたのかも。

ギャングボル&ミット ジャパン・ツアー

 そんな〈音〉だけでは超えられない言語の壁を、今回、クリアして余りあるステージを見せてくれたのが、岸野雄一扮するヒゲの未亡人。いつものように喪服のドレスに身を纏って、スポットライトを浴びながら登場したヒゲの未亡人さん。シャンソンから歌謡曲まで、ポピュラー・ミュージックの歴史を一人で総括して見せるような、洗練された歌世界はもとより、その間に挿入される、時事ネタから下ネタまで……なユーモアと批評に満ちたセリフ廻しが、ある意味、ヒゲミボの真骨頂なわけですが、この日はそれを映像と字幕スーパーで翻訳するという新技を披露。これは先日のフランス公演の際に、なんとかヒゲミボの世界観を伝えたいという思いから始めたものらしいが、この映像がまたヤバイぐらいキュートで、ヒゲの未亡人さんが「ラブー」と歌いながらパーッと手を振ると、それに合わせてスクリーンにハートや花が咲き乱れるという、なんともドリーミーな仕掛け。

 かつて、ゆらゆら帝国も歌にし〈なぜ鳥が歌をうたわないの いま恋をしているのに どうして花や草が踊らないの〉といった永遠のファンタジーを、岸野雄一は自らがファンタジーの世界の住人になることで実現してしまったのでした。ゴダール映画のシーンをつぎはぎした映像も、男と女がせめぎあうヒゲミボ・ワールドにハマりまくり。ある意味、ネクストレベルでした。

 ヒゲの未亡人に関して、あの生々しいビジュアルが苦手――と敬遠していた人も、これなら大丈夫。米国におけるPUFFYのブレイクに習って、ここは先にアニメで女子供に免疫を与えておいてから、じわじわとリアル・岸野を売り出すというのはいかがでしょう? そうしたら世界的ブレイクも決して夢ではないと思うのですが、まあいいとこ「サウスパーク」か……?

・文中に登場したアーティストの作品を紹介
02年にリリースされた、ヒゲの未亡人のアルバム『ヒゲの未亡人の休日』
今年1月にリリースされた、ドラジビュスのアルバム『Mascarade』
06年にリリースされた、おばけじゃーのアルバム『満福語』

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