第9回 カジヒデキ『MINI SKIRT』、bis『The New Transistor Heroes』
こちらのコーナーでは、OOPS!編集部員が、〈10年前にリリースされたCD〉をネタに、思い出話をとりとめもなく話していきます。当時流行ったジャンルや時代を飾ったアーティスト、その他もろもろのキーワードを放り込み、雑談ライクにこの10年の音楽シーンをぼんやりと総括&再検証いたします。
原田 いやー、夏が近づいてきたね。「夏! クラブ! ナンパ! 思い出!」だよ。実際にはクラブも行かないし、ナンパもしないけど。とりあえずはフェスだよね。
澤田 僕も行きますよ、フジロック。
原田 東北出身者としては、去年からスタートした青森フェス〈夏の魔物〉がまた開催されるのが嬉しいね。もうちょっと地元の色を出してほしい気もするんだけど。
澤田 ん、地元の色ってなんですか?
原田 青森を代表するミュージシャンと言えば三上寛に決まってるじゃん。“青森県北津軽郡東京村”なんかやったら相当盛り上がるでしょ。もっと新しいアーティストがいいんだったら、人間椅子もいるよ。イベント名もスピッツから取らないで、人間椅子の“青森ロック大臣”をそのまま使えばいいんだよ。「アッオモーリッ! アッオモーリッ!」で合唱するキッズの姿が目に浮かぶね。
澤田 青森出身じゃないけど、ボアダムスは『恐山のストゥージズ狂』を出していますね。恐山でフェスもいいかもしれない。降霊フェスティバル。大トリはイタコを使って、池田貴族を呼ぶんですよ。
原田 ロックフェスの可能性はまだまだあるってことだ。アグレッシヴな地方フェスの登場がこれからも期待できそうだね。
■カジヒデキ『MINI SKIRT』
原田 最初はこれ、カジヒデキの『MINI SKIRT』。今年の1月には10周年記念デラックス・エディションが出たんだよね。
澤田 97年に出た邦楽の作品で、10周年記念盤が出るのってこれが初めてのような気がします。フリッパーズの紙ジャケとかありましたけど、あれは15年くらい経ってたし。
原田 アメリカでは10周年でデラックス・エディションが結構出ていた。ウィーザー、ジェフ・バックリー、ペイヴメントとか。そういった流れがあって邦楽でもなんか出そうって話なのかもね。
澤田 とにかく、これは10周年記念盤が出るくらい売れたアルバムなんですよね。トラットリアも経営が結構厳しかったけど、カジ君が売れたことでやりやすくなったという話を誰かがしていました。
原田 コーネリアスが〈カジ君バブル〉って言ってた時もあった。CMでも見たよね。一平ちゃんに本人が出たりとか、キューピーマヨネーズのCMで曲が使われたりとか。
澤田 カジ君のCMといえば広末ですよ。DoCoMoのポケベルCMで“マスカット”が流れていて、まだ瑞々しい広末がすべり台から降りてくるんですよ。あれは鮮烈でした(興奮しながら)。
原田 ふーん。俺はこれ、リアルタイムで買ったし、よく聴いていた。トラットリアから出てきた元ブリッジの人のソロ作という期待もあったし、アイドル的な要素も強かったから、コーネリアスの次に出てきた才能という見え方もしていて。実際はイメージと違ったところもあったんだけど。
澤田 ブリッジはどうでした?
原田 好きな曲もあったよ。でも、ヴォーカルの無垢な感じがちょっと苦手だった。80年代的なピュアさを持っているように見えて。80年代のピュア女性ヴォーカルがあんまり得意じゃなかったからさ。
澤田 ブリッジは、良くも悪くも日本のネオアコについて回るものを全部抱えてしまったバンドでしたよね。
原田 全体がソフトなもので包まれているイメージがあんまり好きじゃないんだ。カジヒデキにもそれを感じていて。売れてヴィジュアルが表に出て来ることによって、厳しいと思うことが多くなっていった。
澤田 カジ君は最初から天然というか、変なところがあったんだけど、それを感じさせない勢いが当時はあった。ミュージックステーションに出た時に見たんですけど、半ズボンで暴れていて、やっぱり異様でしたね。あれは印象に残っています。
原田 異形であるとはいえ、日本のスウェーディッシュ・ポップ・ブームを盛り上げた部分はもっと評価されてもいいよね。スウェーデンに対する上の世代のイメージは、〈フリーセックスの国〉だったわけで。ある時期を境に、オセロの石がクルっとひっくり返るようにスウェーデンはおしゃれってことになった。そのオセロの裏表には、川上麻衣子とカジヒデキの顔がプリントされてるんだけど。
澤田 個人的にはカジヒデキ以前に流行ってたカーディガンズもリアルタイムじゃなかったから、スウェーデンのイメージってわかんないですよ。この頃はギタポ好きのオリーブボーイみたいな人たちが沢山いましたよね。97年に大学に入ったから、そういう文化に触れ始めのときで。
原田 オリーブ少年のお手本になった存在というわけでもないでしょ? カジヒデキもその波に乗っていたわけで、なんとなくおしゃれな雰囲気を、広く一般にまで汲み取れるようにしたことが大きかったんじゃないかな。ってなんかひどいこと言ってるかもしれないけれど、このアルバム自体はいい作品だったよ。
澤田 取って付けたみたいですね(笑)。僕は、シングルは耳にはしていたけれど、アルバムは聴いてないんです。コーネリアスの“ファースト・クエスチョン・アワードのテーマ”をカヴァーしていましたよね。デラックス・エディションにも入っている、〈ハイ・スクール登校編〉ってやつ。日本語で歌っていていびつなんですよ。半ズボンで暴れるカジ君的イメージを強調しているような……。
原田 ネガティヴな方向に戻さなくていいよ(笑)。とりあえず、このアルバムは売れちゃっただけに、雰囲気モノみたいな評価をされているけれど、それだけじゃないと俺は思っているよ。当時の勢いが空回りせずにリスナーにフィットした良作である、ということで終ろう。
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