第16回 The Flaming Lips『The Soft Bulletin』
第16回 The Flaming Lips『The Soft Bulletin』2009/04/15 | タグ:The Flaming Lips
こちらのコーナーでは、OOPS!編集部員が、〈10年前にリリースされたCD〉をネタに、思い出話をとりとめもなく話していきます。当時流行ったジャンルや時代を飾ったアーティスト、その他もろもろのキーワードを放り込み、雑談ライクにこの10年の音楽シーンをぼんやりと総括&再検証いたします。
原田 ものすごい遅くなったけど今年一発目ということで、99年になにをしていたのか思い出しつつ話をしてみよう。
澤田 僕は大学3年生でした。98年は一番レコードを買ってたけど、記憶が飛んでて何を買ってたのか一番憶えてない時期だったんです。前にも話したけど、この頃からレコード屋が試聴をさせるようになって、それまで全然試聴できなかったのになんでも試聴できるようになった。どれもまあまあいいから、全部買ってもいいし全部買わなくてもいい、みたいな混乱が生じてしまって。しばらくなにも買わない状態が続いたんです(笑)。
原田 俺は岩手の大学4年生だった。地方にブックオフが大量に出来始めた時期で、やたらブックオフ巡りをしてたなー。一番近い店舗はCDの在庫をだいたい把握してて、棚に新しいCDが追加されるとわかるから、それだけチェックするような状態で。今と違って値段の付け方がゆるくて、いいCDを安く買えることが多かったんだよなぁ。店にとってはいい迷惑だったんだろうね、俺。
澤田 僕もディスクユニオンの本厚木店にほぼ毎日通ってたんで、棚に何があるのかはほぼ覚えてました。半額になるのを待ったりよくしてたし。
原田 ネットが一般的に普及しだしたのもこの辺りだよね、きっと。みんな家でネットをするためにパソコンを買い出した。ダイヤルアップの接続音とかテレホーダイとか、今は消えてしまった過渡期のネット文化に郷愁を抱いている人も多いよね。
澤田 僕がパソコンを買ったのも99年の終わりでしたね。一番最初のiBookを、発売直後くらいに。その頃、モーニング娘。にいた市井紗耶香と同じモデルだぜ!とか言って。99年か……モー娘。が熱い季節だったな……(ディープな思い出に耽溺)。
■The Flaming Lips『The Soft Bulletin』
原田 というわけで、今回はフレーミング・リップスのアルバム『The Soft Bulletin』を。それまで実験性の高いノイジーな音楽をやってた彼らにとって、転機になった作品だね。日本では、コーネリアスのファンなんかも取り込んで一気に知名度を上げた。80年代は、エコバニみたいなバンドをネオサイケって言ってたけど、それとは違う文脈でネオサイケ的なバンドが当時は沢山注目されはじめたんだと思う。モグワイとか、マーキュリー・レヴとか。
澤田 80年代のネオサイケとどう違ったんですか?
原田 んー。80年代がニュー・ウェイヴを引きずったサイケだとしたら、90年代はシューゲイザーとローファイのフィルターを通過しているとか? ポスト・ロックと呼ばれた人たちとの関わりも大きかったから、曲単位で見るといわゆるロック然としていないものも沢山あると思うし。あと、デイヴ・フリッドマンがプロデュースをしているものはそう言われる傾向にあった。
澤田 『The Soft Bulletin』の1曲目“Race For Prize”は名曲でしたよね。そういえば僕は、この曲ダウンロードしたんですよ。なにかのソフトを使って(笑)。
原田 そういう時代だったよね。この人たちは4枚組で同時再生しないと曲ができない『Zaireeka』っていうアルバムを出したりして、実験なのか冗談なのかわからないトリック・スター的なところがあった。そういう人たちが出したのに、“Race For Prize”はストレートな人間臭さが出ていてポップで、みんな好きだよね。元々はジャンクでヘロヘロなバンドだったんだけど、この曲で一般的な評価を得たんだと思う。アルバムには、他にもゴスペルみたいな曲も入ってたりして、とにかく壮大だった。
澤田 音楽的に実験性が強くてジャンクだったのに、なんでポップになったんですかね? ジム・オルークも似たような流れでポップな作品を出してたけど。
原田 気分が呼応してたのかなぁ。そういう人たちにとって、ポップであるものと実験性が強いものって対極にないのかもしれないよね。両方その人のふり幅のうちの1つであるとか。このアルバムは前情報としての期待度も高くて、インディー・ロックの波の中で一番大きいものという印象があった。
澤田 インディー・ロックも流行ってましたね。この後フレーミング・リップスはどうなったんですか?
原田 ボアダムスのYoshimiからタイトルを取った『Yoshimi Battles Pink Robots』を02年に出して、06年に『At War With The Mystics』を出してる。去年末には、制作に7年かけた映画「Christmas On Mars」のサントラを本編付きで出してるし、活動はちゃんとしてるよね。けど、インディー・ロックが更新されてるから、今の彼らと今のインディー・ロックのムードはジャストでフィットしてないのかも。そこまでの注目度はないもんね。
澤田 僕もこのアルバム以外は持ってないんです。その映画は話題になってたんですか?
原田 作っていること自体は話題になってたんだけど、そんなにだったかも。作っているという話のほうが盛り上がってたかもしれない。
澤田 じゃあ、当時リアルタイムで買ってた人たちはいまなに買ってるんですかね?
原田 CD買ってないでしょ。もう30歳過ぎてCD買ってる人なんて、レアケースだもの。音楽系の仕事をしている人だけなんじゃない?
澤田 また寂しい話になってしまった(笑)。
原田 そう言えば、この辺の年に、水本アキラがやってた「Rock The Roots」っていうテレビ番組あったの知ってる? みうらじゅんがコーナーで毎回出てたやつ。
澤田 知ってますよ。「Rock The Roots」のあとに、「Music Roots」になったんですよね。
原田 あれよく見ててさ。その番組の記憶とフレーミング・リップスのこのアルバムが俺の大学時代の記憶としてなんか妙に残ってるんだ。みうらじゅんがテレビに出ているのを見るのも嬉しかったし。ボブ・ディランのことだけ話す人、みたいな役割で。
澤田 ロック崖先生って肩書きで出てましたよね。いかにも90年代の話だなあ。後期渋谷系カルチャーを扱った、ゆるトーク・バラエティーみたいな番組でした。あの番組でもモー娘。特集をやってたことは言及しておくべきです!
原田 当時の言葉でいう〈こじゃれ〉とモー娘。がリンクした瞬間があったってこと? っていうか、モー娘。の話はもういいよ。
澤田 原田さんがロック担当なんだから。他になんか言っとくべきことあるでしょう。
原田 あ、そういえば俺、この次の年のサマソニ1回目に行った記憶がある。そこでフレーミング・リップス見てるはずだな。
澤田 その話をしてくださいよ! どうだったんですか、ライヴは?
原田 見てるはずなんだけど……、全く憶えてない。グリーン・デイのライヴを少し見たことと、富士急のジェットコースターの下を通って帰った記憶しかない……これって老いかな?
澤田 わざわざ上京して観に行ってるのに? どういうことですか。まあ彼らは今年のサマソニにまたやって来ますから、今度こそしっかり記憶に焼き付けてくださいよ。
・フレーミング・リップスの作品を紹介
OP編澤田(右) 78年東京生まれ。アーリー90's宮沢りえブームが再燃。「サンタフェ」欲しいです。
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