第15回 Brian Wilson『Imagination』、Fatboy Slim『You've Come A Long Way, Baby』
2008/12/17 | タグ:Brian Wilson Fatboy Slim
こちらのコーナーでは、OOPS!編集部員が、〈10年前にリリースされたCD〉をネタに、思い出話をとりとめもなく話していきます。当時流行ったジャンルや時代を飾ったアーティスト、その他もろもろのキーワードを放り込み、雑談ライクにこの10年の音楽シーンをぼんやりと総括&再検証いたします。
原田 ついに出たね、チャイデモ。
澤田 ああ、ガンズの新譜ですね。思ったよりも盛り上がってない感じがしません?
原田 そうそう。14億円もかけてるんだから、映画になってもいいと思ってるんだけど。「エイリアン VS ヴァネッサ・パラディ」が成立するなら、「エイリアン VS ガンズ・アンド・ローゼズ」でもいいし、「ヴァネッサ・パラディ VS ガンズ・アンド・ローゼズ」でもいいでしょ。なんかぶち上げた感じとかお祭りの感じが全然しない。ロック・バンドがアルバムを出しました、おしまい。ってことになっちゃってる。いいの?
澤田 映画を作るかどうかは置いておいて、確かに今のCDの売り上げを考えると、そういうお祭りみたいな仕掛けってしづらいのかも。ガンズの新譜でお祭り気分なのは、ドクター・ペッパーくらいなもので。
原田 なんか寂しいなぁ。とりあえずガンズの復活に便乗してこのコーナーも復活させることにしようかなと。ガンズを盛り上げるという意味でも。
澤田 あんま貢献する自信はないですけど。
原田 じゃ、せっかくだから、1枚目は復活作を取り上げてみよう。
■Brian Wilson『Imagination』
原田 まずは、ブライアン・ウィルソンのアルバム『Imagination』から。これは1回聴いて売っちゃったなぁ。当時はビーチ・ボーイズにとって幻のアルバムだった『Smile』のブートレグがどんどん出て、買いやすくなったりしてた時期だった。これがブライアンの復活作ってことなの?
澤田 80年代後半に復帰ソロを一枚出してるんです。でも、それから95年の『I Just Wasn't Made For These Times(邦題:駄目な僕)』 まで、ずーっと出してなくて。で、『I Just~』は、過去に出した曲の一人弾き語り再演みたいなやつだったんです。あと、ヴァン・ダイク・パークスとのコラボレーション『Orange Crate Art』も95年に出てますよね。あれは内容は良かったんですけど、曲はヴァン・ダイクが用意して、ブライアンは歌っているだけだった。2人がコンビを組むことは、『Smile』の復活を意味するみたいなことで盛り上がったんですけどね。
原田 ビーチ・ボーイズ周辺がやたら盛り上がってたしね。『Imagination』を出したタイミングで初来日したんだっけ?
澤田 そうそう、僕は行きましたよ。ワンダーミンツを引き連れたライヴで。98年に久々にアルバムが出て、完全復活みたいな雰囲気だったんですけど、復活というには正直微妙だなと思ってた人が多かったはず。本人がイニシアチブを取ったライヴって感じじゃなくて、操り人形みたいな感じだったんです。
原田 今の活発な活動に比べれば、全然復活という感じじゃなかったんだろうね。今はオリジナル・アルバムもちゃんと出せるだけの精神状態の良さを感じるし、過去に決着が付いた感じがするもんね。当時は、なんで急にビーチ・ボーイズの評価が高まったの? 『Pet Soounds』のボックス・セットもこの頃に出てた。
澤田 『Good Vibration』のボックスがその前に出てるんです。僕がはじめて買ったボックス・セットも『Pet Sounds』のボックスでした。いろんな人が『Pet Sounds』の凄さを話したのが90年代の序盤で、このころはビーチ・ボーイズのサーフィン時代がすっかり軽視されたのが定着してて。従来の〈ビーチ・ボーイズといえばサーフィン・サウンド〉みたいな価値観が変わったんですよね。
原田 サウンド・プロダクションの評価が高まってた時期だもんね。音響が凄いんだってみんな言ってた。
澤田 それによってマイク・ラヴが嫌われる、みたいな風潮もあって。僕もそういう感じで聴いてたし。でも、それはなんでなんですかね。山下達郎がずっとそういう評価をしていたと思うんですけど、渋谷系のミュージシャンとその周辺のメディアが音響的な部分だけを抜き取って再発見的に評価したことが決定打になった気がします。
原田 ブライアン・ウィルソンの評価が一番高まった時期のアルバムにしては、『Imagination』の評価は決して高かったとは思えないんだけど。ファンとしてはこのアルバムはどう思ったの?
澤田 一応、ブライアンらしいポップな曲は入っているんです。当時はブライアンっぽければ復活だ、というムードだったけれど、今冷静に聴くと完成度の面ではやや微妙だったのかも。はっきり言ってしまうと、音がダサい。典型的なおっさんの新譜の音なんです。ハイファイすぎて、いわゆるファンが求めるアナログな音とは違って。そこに送り手と受け手のズレが。
原田 今年出たブライアンのソロ『That Lucky Old Sun』のほうが今っぽい音だもんね。
澤田 『Imagination』のほうがハイファイだから今っぽい、とも言えると思うんですよ。でもそのほうがダサくなってしまう。
原田 ローファイな音が一般的に定着して、それがいいものであるという価値観が普及したから、こういったオールド・スクールな歌ものでハイファイすぎる音はダサいよね、ということになったんじゃないの。ヴィンテージっぽいものを繰り返し作っていくことで元のヴィンテージとは違う、スタンダードが出来上がったというか。
澤田 原田さんは『Pet Sounds』をどう聴いてたんですか?
原田 最初に聴いた段階で、既にしっかり評価されている状況だったから凄いものだと思ってたんだけど、聴いたら「オールディーズだな」という程度だったよ。何回も聴かないと評価されている理由がわからなかった。
澤田 リアルタイム世代も、『Pet Sounds』がいかに変な音楽かっていうことに気づかなかった人がほとんどだったんです。説明されて「ああ、そういうことなんだ」ってわかる感じで。90年代になると、これがいかに変な音楽だったかということを継承したバンドが出てきて、それを先に聴いてた人だとまた聴き所が違うのかもしれないけど。
原田 たとえば、ブライアン・ウィルソンが今同じように復活したとして、当時の再評価と同じように歓迎されて受け止められたかな。90年代は音楽知識を取り入れることを楽しんでいる人が多かったし、学習の時代だったと思うからああいう評価だったけど。今の時代にブライアン・ウィルソンが復活してても、昔の人ってことで終わりそう。
澤田 あの時点では、ちょっと前までのスライと同じような状態でしたし。でも、最近のスライの復帰は、そこまで大きな話題にはならなかった気がする。
原田 あー、スライの来日なんてとんでもないことなのに、コアなファン以外に熱が広がる感じってなかったもんね。音楽好きでも「あ、来てたんだ」みたいな反応の人が多かった。スライみたいな感じで、凄いんだけどそこまで盛り上がらない、という状態になりそう。04年に『SMiLE』がオフィシャルに出たわけだけど、熱狂している人ってそんなにいなかったもんね。聴いてない俺がこんなこと言える分際じゃないんだけど。
澤田 確かにそうかも。『SMiLE』は僕も聴いてないんですよ……。ところで、90年代にビーチ・ボーイズ的なことを継承してた人がたくさんいたけど、今は誰かいるんですか?
原田 エクスプローラーズ・クラブがいるじゃん。俺がこの夏会社でしつこいくらい聴いてた。彼らは出るべくして出たバンドではないよね。ハイ・ラマズとは意味が違うでしょ。コスプレとか物まねだもん。エクスプローラーズ・クラブを褒めるのは、「クリカン(栗田貫一)のルパンでもいいんだ」という心境と同じようなもんでしょ。
澤田 エクスプローラーズ・クラブは、『Pet Sounds』直前くらいの音で、サーフィンの匂いも残してるし。そのさじ加減もよかったのかも。でも、そういう物まねみたいなバンドがいることが変じゃない状況になっちゃったことと、90年代から入ったファンが現行のブライアンにあまり刺激を感じないことは繋がっているのかもしれないですね。




























